一劫年のサイコロ 一回目

一劫年のサイコロ 一回目


「おい! マザー!地下の村の奴らがみんな海底に上がってきたみたいだが、これで大丈夫なのか?」

蓮姫はマザー様に尋ねた。


すると、マザー様は穏やかに微笑みながら言った。

◇はい、大丈夫です。沢山のいのち達がこの広い海から進化し広がっていくでしょう。

おや? 後ろにあなたのお客さんがあんなに!◇


「蓮姫ちゃん、君かー!

俺たちのご先祖の土地を復活させてくれた人は」


蓮姫が後ろを振り返ると、海底から上がってきた大勢の村人たちの姿が見えた。

彼らは、口々に蓮姫に感謝の言葉を述べてきた。


「お前ら、ちょっと押すなって! 苦し~」



◇おやおや、蓮姫さんはもうすっかり有名人ですね。

ウフフ……◇



「マザー、テメェ、笑ってねえで助けろ!」



「おい!あんた蓮姫とか言ったか?」


「ああ、ハムザか。どうした? 」


「え~と、俺あのとき……、

あんたがアマザに乗り移ってたときな?

そのときに、あんたとアキアに酷いこと言って本当にすまなかった」

ハムザは、蓮姫に誠意を持って謝罪し、許しを乞うた。


蓮姫はそんなハムザの真剣な姿に誠意を感じ彼を許すことにした。


「おいおい! 土下座すんなよ!」


「いいや、俺の気がすまない」


「まあまあ、落ち着け! な?」


「俺は自分があのとき言った言葉を今でも後悔しているんだ。

蓮姫、あんたには今こうして謝ることが出来たが、

少年は、アキアはもういない……」


「逆に考えてみろ!

私は反対されたほうが燃えるタチなんだ。

お前があのときああ言ってくれて無かったら

アキア《あいつ》の為に本気で行動を起こそうなんて思わなかったのかもしれん」

蓮姫はハムザの真剣な姿に誠意を感じ彼を許すことにした。



「あ! お姉ちゃん生きてたんだ!

も~! ボクが姉ちゃんを何度起こそうとしても

全然起きないから

死んじゃったのかもって、

すっご~く心配したんだよー!」


「私はそんな状態だったのか!

心配かけてすまんな、小僧」


◇今私は邪魔ですね。

後で落ち着いてからまた私のところに来てください◇


「ああ。

時を飛ばしてくれるって約束だもんな」



そして、蓮姫とオイロスは別れの時を迎えた。


「え?

やっぱ、お姉ちゃん帰っちゃうの?」


「ああ……。

オイロス、短い間だったが世話になった」


「えー?

せっかく仲良くなったのにー!

せめてもう少しいてよ!」


「小僧悪い。

私にはな、早く帰って謝らなきゃならない人がいるんだ」


「謝る?」

オイロスは不思議そうに蓮姫を見つめていたが、

それ以上は突っ込んで聞かなかった。


「じゃあ、約束して!

ボクこの村のリーダーになる!

そして村のみんなを絶対幸せにする!

だから、その夢がかなった時に必ず会いに来て!」


「あ~わかった。

じゃあ私も約束しよう!

お前が村のリーダーになった後

私を探してみろ!

もし私を見つけられたら私から出向いて行ってやろう!」


「かくれんぼだね?」


「そうだ。

こう見えて私はかくれんぼの天才だからな。

甘くみるなよ!」


「のぞむところだよお姉ちゃん!」


オイロスは、蓮姫との別れを惜しんだ。

しかし、またいつか必ず会えることを信じて、二人は笑顔で別れを告げた。



こうして、オイロスとの約束を終え、蓮姫はマザー様の元に向かった。



「お待ちしていました。

今あなたの前に浮かんでいるのが

"一劫年いのちのサイコロ"です。

そのサイコロを振って転がしてください」


「これか」

そのサイコロはスイカ程の大きさがあり、

眩しい金色の光を放っていた。


「転がす前に聞きたいんだが、このサイコロには目が無いではないか?」


「はい。通常サイコロは1~6までの数字がそれぞれあてられていますが、

このサイコロは違うのです。

サイコロの6面にそれぞれ、ランダムに未来の景色が映っては切り替わっているんです」


「なるほどな。

賽の目の確率は6通りじゃなくもっとたくさんあるってことだな?」


「はい。

確率は4万6656通りありますので」


「うっひゃー!

そんなにあるのか!

まあ、迷っていてもしかたない。

じゃあ投げさせてもらう」


「そりゃー!!!」


蓮姫は、前にハムザのあそこにかました剛速球のように、

マザー様の顔面らしき場所に向かってサイコロを叩きつけた。


『バン! ポト』


サイコロは勢いよくマザー様の体に当たったはずだった。

しかし、もう目の前にマザー様はいなかった。


「なんだ。面白くない」


蓮姫が周りを見渡してみると、ものすごい早送りで周りの景色が動いていた。


 海が一瞬で干上がり、空は瞬く間に分厚い灼熱の雲に覆われた。

そして、すぐに冷え、低温の砂漠になった。

そして雨が降り、水かさが増え、また海底に戻る。この繰り返しだった。


蓮姫の頭は、狂う平衡感覚と目まぐるしく変わる光の刺激に疲れてしまった。

そして、だんだんと……。





***********************

???

「カムラちゃん? さっきから具合わるそうだけど本当に大丈夫?」



「私は大丈夫。

それより、わたしの秘密基地までもうすこしだよ」


???

「う、うん」


—————————————————————

↑【登場人物】

蓮姫カムラ

•オイロス

•ハムザ

•マザー様

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