一劫年のサイコロ 一回目

一劫年のサイコロ 一回目

「おい! マザー!

地下の村の奴らがみんな海底に上がってきたみたいだが、

これで大丈夫なのか?」



◇はい、大丈夫です。

沢山のいのち達がこの広い海から進化し広がっていくでしょう。

おや? 後ろにあなたのお客さんがあんなに!◇



「まあな。私にかかればこんなの朝飯前だ」



「お姉ちゃん! うまくいったんだね?」



「ああ!」



「蓮姫ちゃん、君かー!

俺たちのご先祖の土地を復活させてくれた人は」



「お前ら、ちょっと押すなって! 苦し~」



◇おやおや、蓮姫さんはもうすっかり有名人ですね。

ウフフ……◇



「笑ってねえで助けろ!」



「おい!あんた蓮姫とか言ったか?」



「ああ、どうした? ハムザ?」



「え~と、俺あのとき……、

あんたがアマザに乗り移ってた過去な?

そのときに、あんたとアキアに酷いこと言って本当に

すまなかった」



「おいおい! 土下座すんなよ!」



「いいや、俺の気がすまない」



「まあまあ、落ち着け! な?」



「俺は自分があのとき言った言葉を今でも後悔しているんだ。

カムラ、あんたには今こうして謝ることが出来たが、

少年は、アキアはもういない……」



「逆に考えてみろ!

私は反対されたほうが燃えるタチなんだ。

お前があのときああ言ってくれて無かったら

本気で行動を起こそうなんて思わなかったのかもしれん」



「蓮姫……」



「あ! お姉ちゃん生きてたんだ!

も~! ボクが姉ちゃんを何度起こそうとしても

全然起きないから

死んじゃったのかもって、

すっご~く心配したんだよー!」



「私はそんな状態だったのか!

心配かけてすまんな、小僧」



◇今私は邪魔ですね。

後で落ち着いてからまた私のところに来てください◇



「ああ。

時を飛ばしてくれるって約束だもんな」



「え?

やっぱ、お姉ちゃん帰っちゃうの?」



「ああ……。

オイロス、短い間だったが世話になった」



「えー?

せっかく仲良くなったのにー!

せめてもう少しいてよ!」



「小僧悪い。

私にはな、早く会って謝らなきゃならない人がいるんだ」



「謝る?」

オイロスは不思議そうに蓮姫を見つめていたが、

それ以上突っ込んで聞いてこなかった。


「じゃあ、約束して!

ボクこの村のリーダーになる!

そして村のみんなを絶対幸せにする!

だから、その夢がかなった時に必ず会いに来て!」



「あ~わかった。

じゃあ私も約束しよう!

お前が村のリーダーになった後私を探してみろ!

もし私を見つけられたら私から出向いて行ってやろう!」



「かくれんぼだね?」


「そうだ。

こう見えて私はかくれんぼの天才だからな。

甘くみるなよ!」



「のぞむところだよお姉ちゃん!」





こうして、オイロスとの約束を終え、

蓮姫はマザーの元に向かった。



◇お待ちしていました。

今あなたの前に浮かんでいるのが

『一劫年のサイコロ』です。

そのサイコロを振って転がしてください◇



「これか」

そのサイコロはスイカ程の大きさがあり、

眩しい金色の光を放っていた。



「転がす前に聞きたいんだが、このサイコロには目が無いではないか?」



◇はい。通常サイコロは1~6までの数字がそれぞれあてられていますが、

このサイコロは違うのです。

サイコロの6面にそれぞれ、ランダムに未来の景色が映っては切り替わっているんです◇



「なるほどな。

賽の目の確率は6通りじゃなくもっとたくさんあるってことだな?」



◇はい。

確率は4万6656通りあります◇



「うっひゃー!

そんなにあるのか!


まあ、迷っていてもしかたない。

じゃあ投げさせてもらう」


「そりゃー!!!」


蓮姫は、前にハムザのあそこにかました剛速球のように、

マザーの顔面らしき場所に向かってサイコロを叩きつけた。


『バン! ポト』


サイコロは勢いよくマザーの体に当たったはずだった。

しかし、もう目の前にマザーはいなかった。


「なんだ。面白くない」


蓮姫が周りを見渡してみると、ものすごい早送りで周りの景色が動いていた。


 海が一瞬で干上がり、空は瞬く間に分厚い灼熱の雲に覆われた。

そして、すぐに冷え、低温の砂漠になった。

そして雨が降り、水かさが増え、また海底に戻る。この繰り返しだった。


蓮姫の頭は、狂う平衡感覚と目まぐるしく変わる光の刺激に疲れてしまった。

そして、だんだんと……。





***********************

???

「カムラちゃん? さっきから具合わるそうだけど本当に大丈夫?」



「私は大丈夫。

それより、わたしの秘密基地までもうすこしだよ」


???

「う、うん」


——————————————————————

↑【登場人物】

蓮姫カムラ

•オイロス

•ハムザ

•マザー様

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