一度見ただけで手に取りたくなる、そして一度見たら二度と忘れないタイトル

 週間売上ベストにいつも上がってくる本は、人気作家・人気シリーズの新作とか、芥川・直木賞とか有名な文学賞を受賞した作品、メディアで名の知れた有名人の本とかですが、そうでなくても売れる本はあります。


 既に世間に名前を知られている方の本は、その著者の本ということでお客さまは手に取ってくれるし、有名な文学賞を受賞した本は、「今回の直木賞の本」とかで問い合わせがある(売れる)ので、タイトルはそれほど関係ないかもですが、これをお読みの方は、そうでないか、これからそうなる予定という方が多いでしょうから、本のタイトルは大事です(三度目)。


 そうでなくても売れている本は、タイトルがいいです。特に教養系の新書は、表紙が文字だけのシンプルなデザインのせいか(限りなくカバーに近い帯とか、著者の写真付きのカバーがついたのも最近はよく見ますが)せいか、そうゆうのが多いです。

 例えば、



 「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問から始める会計学」

 (山田真哉/著 光文社新書191 ISBN978-4-334-03291-3)


 「人は見た目が9割」

 (竹内一郎/著 新潮新書137 ISBN978-4-10-610137-3)


 「住んでみたドイツ8勝2敗で日本の勝ち」

 (川口マーロン惠美/著 講談社+α新書628-1D ISBN978-4-06-272814-0)



 とか。著者の方の名前は知らなくても、一度見ただけで頭の中にすっと入って、内容が気になるタイトルです。



 あと、これは実用書ですが、


 「医者に殺されない47の心得 医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法」

 (近藤誠/著 アスコム ISBN978-4-7762-0764-1)


 とか。これを見たら、医者に殺されたくないひとはもう読むしかない。

 いずれもベストセラーです。


(ちなみに自分は、これらの本を現役時代によく売りましたが、店頭でちょっと立ち読みしただけで、全部読んでいません……。たぶんいないと思いますが、これを読んでいる方の中にその著者の方はおられたら、ごめんなさい。たぶんいないと思いますが。)


 

 あと、本屋で働いていて、時折お客さまに聞かれるのは、こんなケースでした。



 前にここの本屋で気になって立ち読みした本だけど、その日は買わずに帰った。後でやっぱり買おうと思ってきたけど、その本のタイトルが思い出せない。

 確か、この辺りにあったはずだけど……



 その本は、売れてしまったのか、店内のどこかに移動したのか、それとも返品したのか……本のタイトルか、著者名か、出版社名か……何か手がかりになることあれば、探したり、取り寄せたり、どうにでもできるのですが、そういうお客さまに限って、帯のアオリ文や、表紙のデザインのおぼろげな記憶にあっても、なぜか肝心の本のタイトルを覚えていないことが多いのです。


 帯のアオリ文では、本を探せません。

 実際に書店員時代に使っていた取次さんの本の検索ページ(一般の方でも使えます)で、何回か試しましたが、帯のアオリ文では目的の本にたどりつくことができませんでした……。


 それでは、もしかして、“運命の出会い”だったかもしれない本との出会いが、“運命の売り逃し”……じゃなくて、“運命のすれ違い”。



 なので、もう一度。自ら書かれた作品を紙の本にして本屋に並べることをお望みの皆さまへ、元書店員としてお願い。


 本には、ぜひ、それを見ただけで手に取りたくなる、そして一度見たら二度と忘れないタイトルを!!



 ……それから、ちょっとだけ。

 これは少し勝手なお願いなので、本当に”できれば”でいいのですが……本は見つからないときもありますから、本屋の店員さんに聞くのが恥ずかしくないタイトルがいいかな~と思います。


 週間売上ベストに上がるようによく売れる本は、品切れさせないようにまめに注文を出さないといけません。注文は、ネットでもできますが、電話ですることもあります。


 そのとき書店員は、そのタイトルを電話口で何度も言うことになりますから。


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