60年は無理。

 

 ……


 おっと、失礼しました。もう更新日? 時間が経つのは早いものですね。

 え? 今、読んでいる本ですか?(←誰も聞いてない)。


「図書館の魔女」(高田大介/著 講談社文庫 全4巻)(※1)


「高い塔」と呼ばれる史上最古の図書館の主にして魔女と恐れられる少女マツリカ。権謀術数渦巻く中で、あまたの言葉を操り、言葉だけで世界と渡り合う彼女と、彼女に手話通訳として仕えることになった少年キリヒトの物語。


 ここで知り合ったあるお方に教えていただきまして(黒猫屋さん、ありがとう!)、続編(※2)も読了してからの2回目です。


 あの表情の意味。軽妙に言葉を交わし、こころを通わせるほど、相手に明かせない……出来ることなら明かさずに済めばいいと願う秘密。


 切ないなあ。


 マツリカ様(あえて“様”付けで呼びたい)の由緒正しいツンデレぶりとかは、実際にお読みいただくのが(超!)おすすめなので詳しいことは割愛しますが……少しだけ。


 マツリカ様の5人の護衛のうち1人に、書物に強い関心を持つ近衛兵がいまして、その彼が図書館で1冊の古い本を見つけて、それがまだページも切られていない折り本だったので、「この書物は俺が図書館に訪れるのをずっと待っていたのか!」と、感動する場面があるんですよ。それも60年前……自分が生まれるずっと以前からだったって。


 自分は思いました。


「……本屋じゃ無理だ」


 前にも書きましたが、リアル新刊書店に新刊本を置けるのは、長くても3か月が限度。


 書店に置いてある本は、委託販売。基本、借り物なので、売れそうにない本は早めに返品しないといけない。そうでないと、次の本の仕入れができませんので。


 現実……現代の図書館のことはよくわかりませんが、少なくとも現代の、日本の、リアル書店――個人経営の書店ならいざ知らず、特に全国チェーンの新刊書店――には、誰も手に取らない本を長くは置けません。来ないお客様を、そんなに待ってはいられない。

 

 なら、個人経営の古書店ならいけるのでは? とちょっと考えたのですが、60年という年月は、店主一代では無理。少なくとも二代以上は続いている古書店じゃないといけませんね。


 新刊本にしろ、古本にしろ、そんなに売れない本ならお店に置いていく必要はないし、貴重な本なら、そもそもお店の棚ではなく、鍵のかかる金庫にでもしまって置いた方が良さそうです。


 そこのお店の店主は、長い黒髪が美しい、眼鏡をかけた若い女性で、人見知りだけど本のことを話すときだけは饒舌になるあのひとですね(※3)。本にまつわる謎を解くのが得意な……(笑)。



(元)書店員が考える理想の本屋とは? というテーマで書くつもりでしたが、ずいぶんとまた話が脱線してしまいました。


 ともあれ、人と人の出逢いがそうであるように、本と人との出逢いもまた、一期一会。


 今日本屋で気になった本が、明日もそこにあるとは限らない。

 今日あった本屋が、明日もあるとは限らない。


 本屋さんに行こうGO



 ※1 「図書館の魔女」(高田大介/著 講談社文庫 全4巻)

   1巻→ISBN978-4-06-293365-0

   2巻→ISBN978-4-06-293366-7

   3巻→ISBN978-4-06-293387-2

   4巻→ISBN978-4-06-293388-9


 ※2 「図書館の魔女 からす伝言つてこと」(高田大介/著 講談社文庫 上下巻)

    上巻→ISBN978-4-06-293653-8

    下巻→ISBN978-4-06-293654-5


 ※3 「ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち」

    (三上延/著  メディアワークス文庫)

     →ISBN978-4-04-870469-4

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