読者は作家を救わない。もしくは、自分の作品の対象読者がわからない作者様へ

 もし、この文章をお読みの方が、自らお書きになった作品を紙の本にして書店の店頭に並べることをお望みの作者様で、「自分の作品がどんな読者向けたものかわからないっ!」ってかたがいらしたら、リアル新刊書店に足を運ばれてみるのもいいかもしれません。


 執筆の参考になりそうな本を買いに……というダイマではなくで。書籍化したとき本が並べられる場所・お客様が本を買いにくるところを見るのが何かの参考になるのではないかと思いまして。


 さて。貴方のその作品。書籍化して全国発売されたとき、リアル新刊書店のどの場所・どの棚に並べられるか、具体的に考えたことはありますか?


 考えたことはない? 実は簡単にわかります。


 ここでは12月からのカクヨムコンをはじめ、年間を通して多くのレーベルの新人賞が開催されていますが、そのコンテストに応募した・もしくは応募を検討中・ここからデビューしたい! というレーベルがある作者なら、特に簡単にわかります。


 ペンネームは、お決まりでしょうか?


 もちろんそれぞれの店舗によっても棚は違いますが、だいたい四六版の一般の小説の単行本の棚なら、出版社は関係なく、男性作家/女性作家/時代小説/海外文学……とか、日本文学/海外文学などに分類され、著者名五十音順に、ノベルズや文庫・大人向けラノベの棚なら、出版社別>レーベル別>著者名五十音順に並べられます。


 発売して1~2週間はそれぞれのジャンルの新刊コーナーに置かれますが、それ以降は棚。


 なので、例えば“灰色山穏はいいろやまのん”がうっかりデビューしてしまった場合……うっかりでデビューはできないでしょうが……自分の本は、名字の最初が“は”の作家さんの最後と、“ひ”の名字の作家さんの間に並べられることになります。これがホントのニッチ(笑)。


 なので、作家さんの名前が難しい漢字だったり、読み方が何種類のあって正確なのがわからなかったりすると、どこに並べたらいいかわからなくて、書店員が地味に困ります。


 文庫や新書なら背表紙に著者名の最初の文字が書いてあるし、ふりがなとか、表紙に著者名がローマ字で書いてあるといいのですが、そうでなくて著者名が読めない本もたまにありまして、お店で本が迷子になる原因のひとつです。


 本が迷子になると、その本を探しているお客様も困るので、ペンネームは作家さんにとって思い入れが深いものだと思いますが、せめて名字だけでも読みやすいと書店員は助かるってことをお伝えしておきます。



 閑話休題それはともかく



 貴方の本の置く場所、はわかりました?


 で、やっと本題。


 では、書店に来てその本を手に取るひとは、どんなひとでしょうか?


 年齢・性別・職業……学生さんか、社会人か、今なにをしているひとか? 服装・髪型・ハマっていること・悩んでいることetc……なるべく、具体的に。


 想像できますか?


 そして、大事なことがもう一つ。


「タイトルが気になった」 とか、


「趣味の合う友人に薦められた」 とか。


 そのひとが本を手に取った……いや、理由です。


 自分は、本は「ひとを助けるもの」だと思っています。


 文学作品はもちろん、マンガでも、写真集でも、絵本でも、参考書でも、ドキュメンタリーでも、経済学の本でも、辞書でも、片付けの本でも、ダイエットの本でも、エロ本でも、下ネタ満載のエッセイでも、世に送り出された本は、ただ1冊の例外もなく。材料は紙でも電子でも。


 ひとを助けるものだから、大切なお金と人手と時間をかけて、それが必要な読者の元へ届ける価値がある。


 自分も、多くの本に助けられ、救われて、今もなんとか生きていますから。


 

 読者は作家を救わない。



 作家が読者を救うのです。



 貴方の作品は、誰を救いますか?

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