潰れた本屋の元店員は、対象読者別というのを解説する。⑤マニア向け

 もちろん、プロ作家として食べていくことが目標! の作家さんの作品なら、大勢の読者に受け入れられないといけないし、版元さんのためにも本が売れないと困るのですが。


 せっかく“ネット小説投稿サイト”という、誰でも・無料で・作品を書いて・公開して・たくさんの読者に読んでもらえるありがたい機会と場所を版元さんに作ってもらえた(本当にありがとうございます)のだから、それを上手に使わないのはもったいない! と思うわけで。


 というわけで(どういうわけだ)、⑤マニア向け です。


 SFとか、ミステリとかのジャンルはひとまず置いておいて。


 自分にとって“マニア向け”のイメージは、ウケる・ウケない・売れる・売れない気にせずに、作家さんが好きなものを好きなように楽しんで書いた、趣味全開! フェチ丸出し! (もちろんカクヨムの表現のガイドラインには従いますが)って作品たちです。


 そういうのは、紙の本にしてもおそらく一度に多くは売れない……一般受けはしないと思うのですが、ハマるひとは妙にハマる。刺さるひとにはピンポイントで突き刺さる。そんな作品。


 でも、もちろん、読むひとのことを何も考えず、ただ好きに書いた作品を公開しただけでは、みんな自分の歌や次の選曲に夢中で誰も聞いてないカラオケルームみたいなもので、PV0の山が積み上がって書くのが虚しくなるのは目に見えています。


 自分も含めて“読者”というものは、自分が読みたいものや、興味を惹かれるもの、ちょっと引っかかるものを気まぐれに読むものであって、作者さんが読んで欲しい! って思っているものを読むわけではない。


 けれど、その “読者が読みたいもの”と “作者が書きたいもの”と、上手く合わせること・繋げる方法はあるのでは? と思うわけで。


(自分は、多くの“読者が読みたいもの”の方に自身の作品を合わせることができるのが、売れる作家さんだと思っています。)


 それができれば、読者は自分の好みのものが読めるし、作者は少数でも読者を得ることができる。そうして、ニッチだけど確実に需要はある! ってジャンルや作家さんが見つかれば、版元さんにとってもいいことですし。


 具体的な方法として、ランキングの代わりにタグをたくさん並べ、ジャンルをなるべく細分化してみる……とか考えたのですが、考えれば考えるほど、マニア向けの小説のページを作るのは1人では無理ですね。半端なものを作ったら、「……わかってねえな」って鼻で嗤われそう。


 ならいっそ、ユーザー自身が本屋を作れるシステムとかどうでしょう? 自分の好みの作品を探して、集めて、お店に並べ、来たお客さんに紹介する。その紹介文を読んだお客さんが作品を読んでくれたら、本屋を作ったひとの利益になる、みたいな。


 え? それは、昔からスコッパーさんがやっている? ボランティアで?

 ……確かに。


 うん。だから、マニア向けには、スコッパーさんたちが本屋を作れる専用のフロアがあればいいと思って。


 ネット小説の読者の誰もがテンプレだけを読みたいわけではないだろうし、人気の作品が好みに合わないのはよくある話。


 だけど、ここに投稿された膨大な作品の中から、初めてここにきた読者が自分の好みの作品をタグや検索ワードだけで探し当てなくてはならないのはちょっと大変。


 どんなジャンルにも詳しいひとたちがいるし、そうゆうひとたちが専門のジャンルを決めて作品を集めて並べて置ける本屋を作っていれば、初めてここにきた読者でも、好みに合う作品を見つけやすくなるんじゃないかと思うんです。


 ネット小説投稿サイトにとって、スコッパーさんの役割はとても重要だと思うけど、それを自発的なボランティアではなく、稼げる仕事にできれば、書くひとも読むひとも色々助かるんじゃない? と思った次第です。


 自分がこの作品の冒頭で有料化とか言い出したのは、実はそうゆうわけなのです。



 本は、読むのも、書くのも楽しいけど、売れるのも楽しいですよ。それが好きな作家さんの作品ならなおさら。

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