なぜ異世界トリップものの流行は続くのか。
テンプレもの、売れているっいうけどホントかな~と思って、お馴染みの(紙の)書籍検索サイトで小説・エッセイの売上ランキングを見たら、日によっては上位20位の半数近くを占めていることもあって、マジびっくり。
テレビとかで見る週間ベストのランキングには、ラノベ扱いのものは入らないので、ピンときていなかったのですが……恐るべし、な〇う。
というか、他の小説が売れてない(泣)。
なぜこんなにテンプレものが売れるのか? 色々考察なさっている方もいらっしゃいますが、自分はこう考えるってのを書きます。
(元)書店員とか関係なく、あくまでただの一読者としての個人的な考えですが、今後、社会情勢に劇的な変化が起こるとか、社会現象になるような大ベストセラーでも現れない限り、チートでハーレムな異世界転生・転移ものの流行はまだまだ続く気がします。
なぜなら、テンプレには終わりがないから。
小説でもマンガでもアニメでもドラマでも何でも……娯楽として作られたフィクションは、基本“現実では実現できない夢を叶えるもの”。
現実では実現不可能な欲求を引き出し、それを物語の中で叶えることで読者を楽しませるものだと思っています。
だから、いかに読者自身が意識していない
経済が右肩上がりに成長していたバブルの頃とは違って、今は頑張っても、頑張っても、ちょっとやそっとではうまく成果に結びつかない。成功者はほんの一握りで、自分も含め、他の多くのひとたちにとって、人生は思い通りにならない。とかく生きづらい世の中ですから、
「この社会から逃げ出したい」
「生まれ変わって人生をやり直したい」
「成功して認められたい。でも努力はしたくない」
「カッコよく(かわいく・美しく)なりたい」
「若返りたい」
「好みの・いろいろなタイプの異性(もちろん同性も可)に愛されたい」
「好きなひとを奴隷にしたい」etc.
というのは、意識している・していないにかかわらず、多くの読者が潜在的に持っている欲求だと思うのです。
だから、テンプレ作品を読んだ感想で「気持ちいい」とか「スカっとした」というのをよく聞くのは、この欲求が一時的に満たされて、現実での憂さが晴れるからですね。
こうゆう欲求は、現実ではチートで叶えられませんから、この欲求を満たすためにテンプレな物語が必要になるわけで。
でも。
物語というものは、“現実ではできない望みを叶える”だけのものではありません。
優れた物語は、終わるときにちゃんと読者を異世界から現実に帰してくれます。
昔、何かの本で読んだことがあるんですが、物語とは、読者の意識していない欲求――現実で実現できない欲望――を引き出して、物語の中で叶えて楽しませ、その欲求を実現可能な欲求に変えて、読者を現実に帰すもの、だそうです。
すると、読者の現実で実現不可能な欲求は、実現可能な望みに変わり、現実で昇華される。
テンプレには、終わりがありません。作品は完結していても、異世界に転移・転生した主人公は、たいがい向こうに行ったきり。戻ってきてもまたすぐ異世界に行ってしまったり、現実と異世界が混ざってしまったり、多くの読者がうまく現実に帰ってくることができなくなっているのを感じるのです。
だから、現実では実現できない欲求が、現実では実現できない欲求のまま、膨れ上がって昇華されずにそのまま残り、その欲求を満たすために、テンプレな物語が求められ続ける……というわけ。
読者は異世界に行く方法はよく知っていても、現実に帰る方法はわからないから。
以上が、自分の個人的な分析です。合っているかはどうか、自信はありませんが。
どんな作品であれ、読者さんに喜ばれるものが常に正しいというのが自分のポリシーなので、異世界から帰ることを望まないひとを無理に現実に連れ戻すとかはしないし、できませんが。
でも。
ひとは眠らなければ死んでしまうように、夢を見なければ生きていけない。けど、現実では叶えることのできない夢を見たまま、二度と目を覚ますことがないならば、死んでいるのと同じだから。
自分は、探しているのです。
テンプレを卒業する物語を。
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