リアルがなければ、ネットがあるさ?

 さて、版元さんが自分の仕事を忘れていると思う理由を説明する前に。


 「リアルに新刊書店がなくても、ア○ゾンがあるからいいじゃん?」

とおっしゃる方がいると思うので、そのお方に。


 ありません。


 いきなり、断言しますが、ア○ゾン…ネット書店は、リアル新刊書店の補完はできますが、その役割を完全に代わることはできません。

 それは、なぜか?


 例えば…ある新刊書店が、店を閉めたとしましょう。

 その店が売り上げていた分は、どこに消えてしまうのか?

 そこの本屋で本を買っていた人たちは、いつも買っていた雑誌や本を、いったいどこで買うのでしょうか?


 そのうち何割かは、当然、近所の他の新刊書店(がまだ残っていれば)へ行くでしょう。その店で手に入らないなら、それこそ、ア○ゾンとか。あと、雑誌ならコンビニとか、ですかね。

 しかし、それらを全て足しても、恐らくその店の売上の100%にはならない。そのうち何割かは、どこにも吸収されることなく、消えてなくなり、二度と戻らない。

 それこそが、リアルにあって、ネットにないものです。


 実際、自分が勤めていた本屋の周囲にも、3、4軒、競合する書店がありました。

 それが、ひとつ…またひとつ…と閉店していったのですが…近所の店が閉店すると、確かにこちらの売上が上がります。

そこのお店で本を買っていたお客様が、こちらの店に来てくれたのでしょう。


 でも、


 「商売敵が勝手に潰れてラッキー!」


 とは、なりません。


 なぜなら、そうして売上が上がるのは、ほんの一時的なものであり、やがて元に戻ります。そして、さらに売上は減ってゆく。自分は、ずっとそれを見ていました。

 本屋に来てくれるお客さま、そのものが減っているのです。パイは縮み続けている。


 それを実感したのは、自分、仕事をやめてからですね。

 書店に勤めていたころは、たくさん本(主にコミックですが。字だけのも)を買いました。本の重みのせいで、自分の部屋の本棚の下あたりにある家の梁にひびが入ったので、親に「これ以上買うのをやめろ」と言われたくらいです。

 書店に勤めると、社割で本が買えますからね♪ そのために長い間働いていたと言っても過言ではないくらい。


 「本が好きだから、本屋に勤めていた」というよりも「本が好きでもなければ、やってられるか(逆ギレ)!」ってのが、このお仕事。


 日常的に本に触れる環境にいると、自分の好きな作家さんの新刊はもちろん、まったく未知のジャンルでも「あっ、これ面白そう」と思う本と出会う機会が増える。つい、買ってしまう。

 給料は多くありませんでしたが、その給料の何割かを、本を買って店に還元していました。

自分ばかりではありません。自分の同僚たちは、ほとんどです。

 だから、本屋の売上を上げるには、書店員の給料を上げるのが早道だと常々思っているのですが…それは、まあ置いておくとして。


 その自分ですら、仕事をやめた途端、本を買わなくなった。


 失業したから、単純にお金がないので、本屋に行かなくなったというのが主な原因ですが、日常的に本に接する機会がなくなると、本好きですら、本を買わなくなる。

 せいぜい、続きを追っているコミックの新刊を買いに行くくらい。近くの新刊書店になければ、ア○ゾンに注文します。送料タダだし。

 自分の後に仕事をやめた同僚の女性も「最近、ブック○フに行くのが楽しい」と言っていました。

 書店員が、そこのお店をやめた後も、次の職場としてまた本屋を選ぶことは多いのですが、これだけ書店が減っている現在では、自分のように本屋を離れる方も多いでしょう。

よく本を買っていた書店員すら、職場を離れると、ネット書店や、新古書店で本を買うようになるのですから、リアル新刊書店の売上が減るのは、当然ですね。


 ここに、最初の問題のヒントがあります。


 …てなところで、紙幅が尽きてしまいました。


答は、次回に。


 て、続くんかい!

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