「読者」にして「作者」にして「本屋」

 自分は、おそらく今この文章を読まれる方のほとんどと同じように、本を読むが好きな「読者」で、それが高じて自分の物語を書く「作者」。そして、本を売る「本屋」で長い間仕事をしていました。


 「読者」にして「作者」にして「本屋」。

 それが自分の立場です。

 その三人の立場から眺めたとき、この場所で起こっているほとんどの全ての問題を引き起こし、この文章を読まれている方を苦しめるものの正体が、わかりました。

 いちばん最初の間違い。

 それは、このサイトの名前です。


「カクヨム」


ではなく、


「ヨムカク」


です。以上。


 では、わからないので、詳しく説明しますね。

 この名前では、まず「作者」が小説を「カク」書き、「読者」に「ヨム」読んでもらう/読ませる/読んだふりをしてもらう/ようにしているのが、そもそも間違い。

 このサイトが最初に謳った“物語を愛する全ての人が集まる「場所」を目指す”なら、その順番は、逆でなくてはなりません。


 つまり、「読者」が読みたい作品を見つけて「ヨム」、そして自身も何か感じるものがあったなら作品を「カク」「作者」となって、新たな作品を生み出し、やがて新しい「読者」がその作品見つけて「ヨム」…それが自然なサイクル。

 そのサイクルを、無理やり逆に回そうとしているから、うまくいかないのです。


 「カク>ヨム」 ではなく 「カク<ヨム」


 だから、「ヨムカク」です。


 そもそも、どんな才能をもった作家/作者であれ何であれ、生まれてから一度も他人が書いた言葉/物語/作品に何ひとつ触れることなく、作家/作者には、なれません。

 人類史上最初に言葉というものを発明した/最初の物語を創造した/のなら、話は別ですが、そうでないのなら、全ての「作者」は、はじめは必ず「読者」。

 誰かが書いた作品に触れ、その言葉に心を動かされたひと握りの「読者」が、自分も人の心を動かす作品を書きたいと望み、新しい「作者」になる。

 全ての「作者」は、その前に「読者」なのです。

そして、優れた作者…優れた作品を多く生み出す作家ほど、多く他人の本を読む。たくさん本を読んで勉強をする「読者」となる。

 本屋のよいお客さまです(笑顔)。


 だって、そもそも、本屋に本を買いに来るお客さま「読者」がいなくなれば、「本屋」は潰れるし、取次も、出版社もいらないし、本を書く「作者」は必要ない。

 みんな、そのことを忘れてしまっているご様子。

 肝心な読者をそっちのけにして、ランキングを勝ち上がり、その本を書籍化する権利を手にしても、そのときにはもうあなたの本を置いてくれる書店は、もうどこにもないかもしれないのに。

 そう、遠い未来のことではないです。

 実際、自分の職場はなくなりましたし(泣)。


 でも、ここにおいでの方は、誰も悪くないです。少なくとも、ここに来てくれて自分の作品を読んで下さっている以上、大切なお客さまで、自分の読者です。

 「読者」も「作者」も悪くない。ここにいらっしゃる方は、誰も悪くない。


 では、何が問題か。


 自分、ここを運営なさる版元さんが、自分の仕事をすっかり忘れてしまっているのが原因ではないかと思うのです。


 「誰」に「何」を売っているのか。

 すなわち、誰にオマンマを食べさせてもらっているか(古い)。

 

 「書店」の仕事は、「読者」に「本」を売ること。

 版元さんの仕事も、同じです。

 ただ、直接お客様である読者に売っているか、取次を通じ、小売りの書店で売っているか、その違いだけです。


 どうやら版元さん、自分の会社名から「書店」の二文字を捨てたとき、そのことをすっかりお忘れのご様子なのです。


 言葉は、かくも恐ろしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る