運命を変える1冊の本との出会い
ネット書店が、リアル新刊書店の補完はできても、その役割を完全に代わることができないのは、なぜか?
読者は、ネット書店で「自分が知っているもの」は見つけることはできても、「自分の知らないもの」と出会うことがないからです。
これだけではわからないので、詳しく説明しますね。
リアル新刊書店で、お客さまがレジに持ってくる本は、2種類のものに分かれます。
①好きな作家の新作や、ネットやテレビで見て気になっていたもの。つまり、あらかじめ本のタイトルや、作者などを既に知っているもの。
②その本のタイトルや、作者の名前は知らないが、実際、店頭で見て興味がわき、読んでみたいと思ったもの。
リアル書店(新刊書店・新古書店を問わず)にあって、ネット書店にないのが、この②です。これが、リアル新刊書店が一軒潰れてしまうたび、どこかに消えてなくなる書店の売上の正体です。
皆さまも覚えがありませんでしょうか?
「好きな作家の新刊を買いに行ったら、別に目についた本が面白そうなので一緒に買ってしまった」とか「気がつくと、探していた本とは全然違うものを買っていた」とか。
それが、当たりか、はずれかは、別として。
①の知っている本を探すことに関しては、ア○ゾン…ネット書店は、最強です。リアルでどんな大きな本屋でも、店頭に並べられる本の冊数には限りがあるので、その品揃えには敵いません。しかも、送料はタダときたら、リアル新刊書店はとても太刀打ちはできない。
しかし、そのネット書店にも、弱点があります。
それが②です。
どんな人でも、「自分が知らないもの」は探せない。だって、「自分は何を探しているか」知らないから。
話が抽象的になると、いまひとつピンとこないので、具体的に説明しますと…例えば、あなたの作品が書籍になって、本屋の店頭に並んだとします。
あなたの名前と本のタイトルを知っている読者は、ネット書店でいつでもその本を買うことができます。
本のタイトルか、作家名がわかれば、瞬時にその本を見つけてくれる。送料無料。しかも、早い。ア○ゾンは、自分のパソコンをすぐにかつおぶしの広告だらけにするけど、その点に関しては優秀です。
しかし、あなたの本を知らない読者は、あなたのことを知ることはないでしょう。ネット書店で、読者は、あなたの言葉と物語に出会うことはない。
それこそベストセラーにでもならない限り。
本屋に来るお客さまが読みたいものは、ベストセラーだけではないというのに(嘆息)。
しかし、リアルなら。リアル新刊書店なら。
あなたの本が店頭に並べば、あなたのことを知らない読者でも、あなたの本を手に取ることができる。本屋に来てくれさえすれば。
そして、あなたの本は、そのひとの運命を変えるかもしれない―。
別に大げさなことは、言っていません。
本屋の店頭でも、図書館でも、知人友人に貸してもらったのでも、出会いはどうでも構わない。ひととひととの出会いが運命を変えるように、知らない1冊の本との出会いが、ひとのその後の人生を大きく変えてしまうのは、よくあることです。
この文章をお読みの多くの方にも、覚えがあるのではないでしょうか?
その本を読んで、その言葉、その物語に触れ、心を動かされ、「自分もこんな物語をいつか書いてみたい」と思うきっかけになった1冊の本が。
自分には、あります。
これを言うと年がばれるので、ドン引きされるかもしれないのですが…(汗)。
「狼の紋章」平井和正:著
昔、こちらの版元さんが出された本です。きょとんとされた方が、多いでしょう。
わかった方は、同年代ですね。犬神明は、自分の永遠のヒーローです!
自分、この本と出会わなければ、物語を書きたいとは思わなかったし、その後、本屋に勤めることはなかったでしょう。そして、今、ここにいることはなかった。
あなたには、ありますか? あなたの運命を変えた1冊の本が。
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