本屋にくるお客さまの6割は、探している本のタイトルをよく覚えていない。その2

 もうひとつ、行きましょうか。



「マークスの法則」



ヒント:どちらですか?



「マークス」なら、「山」。



「マークスの山」上・下(高村薫/著)新潮文庫

上巻 た-53-9  ISBN978-4-10-134719-6

下巻 た-53-10 ISBN978-4-10-134720-2



「法則」なら、「マーフィー」ですね。



「マーフィーの法則 21世紀版」

(アーサー・ブロック/著 松澤喜好/訳 松澤千晶/訳)

 アスキー ISBN978-4-7561-4957-2



 前者は、高村薫さんの推理小説。後者は、“洗車しはじめると雨が降る。雨が降って欲しくて洗車する場合を除いて”とかの経験則で有名なビジネス雑学書。

 全然、違う本です。


 なぜ混ざったのか? お客さまが探していたのは、結局どっちだったのか?

 それは、未だに謎のままです。



 あと……これは、自分が問い合わせを受けたのではなく、友人から聞いたのですが、こういうのもありました。



「ゴールデンレトリバー」



ヒント:……犬じゃないし。



思わず、ペット雑誌のコーナーに案内してしまいそうですが、



「ゴールデンスランバー」(伊坂幸太郎/著)新潮文庫

  い- 69-6  ISBN978-4-10-125026-7



 のことだったそうです。

 ……映画化もしましたね。



 書店に勤めていると、日々お客さまにこーゆークイズを出されることになりますが、それでも、探している本が何かわかればいいのです。

 でも、結局、何の本を探しているかもわからないまま、諦めて帰られてしまうお客さまを何人も見ました。お店に在庫があったかもしれないのに!


 これをお読みの方の作品が、無事に紙の本になり、本屋の店頭に並んだとき、そんな悲しい目に合わせないためにも。


 作家さんにとって作品は、そのひとの子供のようなもの。本のタイトルは、その子の名前です。

 

 作家さんの思い入れはわかりますが、作品には、ぜひ、お客さま読者が覚えやすくて忘れにくいタイトルを!

 その作品が、多くの読者に愛される、幸せな本になるために……。




 本屋に来るお客さまがいう本のタイトルがよく間違っているというのは、元書店員で人気漫画家・久世番子さんのエッセイコミック「暴れん坊本屋さん」(傑作!)に詳しいので、興味のある方はおすすめです。


「暴れん坊本屋さん」(久世番子/著 新書館 WINGS COMICS DX)

 棚の巻 →ISBN978-4-403-67125-8

 平台の巻→ISBN978-4-403-67124-1


 あ、「あわてん坊本屋さん」じゃないですよ(笑)。



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