本屋に来るお客さまの6割は、探している本のタイトルをよく覚えていない。その1

 さて、「売れ続ける本」と「売れなくなる本」の話をする前に。


 本屋に来るお客さまは、探している本のタイトルを覚えていないというか……よく間違えて覚えているという実例をお話しましょう。


 本は、タイトルのてにをはが多少違っていても、使われている単語が合っていれば、検索して在庫を探せます。また、タイトルが有名なら、その単語が少しぐらい違っていても、わかるものもあります。例えば、


「君の膵臓をたべたい」(住野よる/著 双葉社)ISBN978-4-575-23905-8


 なら、「膵臓」を他の臓器……「心臓」とか「肝臓」とか「脾臓」とかと間違えても、たぶん大丈夫(この本が出版されたとき、自分は既に書店員ではありませんでしたが、全国の書店で間違われたような気がする)。


 ……なんですが。


 以下は、自分が書店員だったころ、実際にお客さまから問い合わせを受けた本のタイトルです。良かったら、何の本だか当ててみて下さい。



「ひゅうどろ探偵社」



 いきなり難問ですね。


 ヒント:コミックです。

ちなみに、今、ア○ゾンとかで「ひゅうどろ」を検索して出てくるのは、全然違う本ですよ(当時、その本は出版されていませんでした)。


 では、正解を。



「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」(西義之/著 集英社)

ジャンプコミックス 全18巻 1巻→ISBN978-4-08-873827-7

集英社文庫 コミック版 全10巻 1巻→に-14-1 ISBN978-4-08-619459-4



 「ひ」と「ろ」の2文字がかすっただけですね。

 ……雰囲気は、合っているんですが。


「ジャンプコミックスで~」とお客さまがおっしゃったから、かろうじてわかりました。ジャンプで「ひゅうどろ探偵社そんな」タイトルのマンガ、ないですからね。


 ちなみに、ご存じのないって方のために説明すると、2004年から2008年にかけて「週刊少年ジャンプ」で連載されたマンガ作品で、天才魔法律家ムヒョこと無氷透とその助手ロージーこと草野次郎のコンビが、悪霊の罪を裁くダークファンタジー。

 「ムヒョロジ」と言えば、わかる方はわかるはず。


 この本の問い合わせをされたお客さまは、年配の女性の方でした。何でも、お孫さんに買ってきて欲しいと頼まれたんだとか。

 せめて、メモ書いて渡してください……というか、自分が読むマンガぐらい、自分で買いに来てくださいな、お孫さん。



 次いきます。



「100万回死んだねこ」



 ヒント:……いや、確かにそうゆうお話ですか。



「100万回生きたねこ」(佐野洋子/作・絵 講談社)ISBN978-4-06-127274-3



 ですね。

 ねこ、生きてます。

 結末は同じだけど……なんかこう、ねこがすごくひどい目に合わされているような(涙)。


「生きた」と「死んだ」。


単語の意味は真逆なのに、最終的にはなぜか同じ意味になる不思議。


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