潰れた本屋の元店員は、最初の提案の真意を話す。その2

 近所には、まだ大手書店チェーンの支店がいくつかあって、いつでもアルバイトを募集していました。


 “書店員は、潰しがきかない”と言われているそうです。

 つまり、本屋で働いた経験は、他の仕事では役に立たないということで、実際自分の同僚でも仕事を辞めたあと、新しい職場としてまた本屋を選ぶひとは多いです。


 でも、自分は再び本屋で働く気持ちにはなれませんでした。


 本屋は好きな仕事だったけど……というか、本屋の主な仕事は、段ボール箱を持ち上げること。腰痛は、職業病です。


 本が好きでもなけりゃ、やってられるか!!(逆ギレ)


 ……失礼しました(汗)。


 テンパるとレジを故障させる謎の電波を発生させるとか、夜が遅いと困るとか、その理由は他にもありましたが、その一番の理由は、


 本屋に、未来はない。


 そう思ったからです。


 現在の書店の流通システムは、全国の書店に同じ日に新刊を並べることのできる、とても優れたシステムだけど、現在のように、モノと情報が溢れ、本を読むひとが減り続ける時代では、もう限界が来ている。


 本は売れないのに、日々発売される新刊の点数は増え、1冊の本が店頭に置かれる時間はどんどん短くなり、その結果売れなくて、返品される本が増え、版元さんがその分を取り戻すためにさらに発売する新刊の点数を増やさなくてはならない悪循環。


 自分は、教科書配給会社(取次)の倉庫でも少しの間、働いたことがあります。

 新入学シーズンの繁忙期で、物は辞典だったので、少し違うかもしれませんが、書店から注文されたのを70個近い段ボール箱に詰めて送った後……1ヶ月ぐらいに、売れ残ったのが50個近く返品されて戻ってきました。

 せめて逆だったらよかったのに(涙)。


 だったら、始めから20個だけ送ればいいのに……今のシステムでは、それができないのです。


 もちろん、売れる本はよく売れます。

 でも、その「売れる期間」を逃してしまうと、あっという間に売れなくなってしまう。

 週間ベストセラーランキング5分野(文芸・人文/ビジネス/文庫/新書/コミック)上位10位までを欠品させると、上司から電話がかかってきて怒られるので、いつも出版社に注文する(※)のに必死でした。


 この根本的な問題をなんとかしない限り、本屋に未来はない、と。


 たぶん、関係者はみんな気がついていると思います。でも、その方法がわからない。



 でも。



 自分、この「カクヨム」に来て、何か起こっているかわかったとき、愕然としました。 

 けど、それが、今まで自分がしてきた仕事と結びついたとき、思ったのですよ。

 

 今は、前とは違う。

 作者→出版社→取次→書店→読者とわざわざ遠回りしなくても、本の読者と作者が直接繋がることができるシステムがある。

 

 今はまだ始まったばかりで、色々不具合が生じているようだけど、ここを現実の本屋のように、本を読みたいお客様が、いつでも好みの本を探しやすいように、既存のネット書店では決して出会うことがない未知の作家とその作品に、いつでも出会えるような場所に変えることができたなら……今は瀕死の現実の本屋も、救うことができるのではないか、と。

 

 

※本の注文は、取次か、出版社にします。既刊で売れたものはネットで自動的に取次に発注されますが、ベストセラーとか、映像化作品の原作とか、たくさん必要なものは、出版社に電話で直接(平日の午前中)注文する方が確実でした(出版社にもよりますが)。

 

注文方法は、電話、ネットの他にハンディターミナル(データ収集用の端    末)、FAX、郵送など。有効な注文方法は、出版社によって違います。


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