「売れる本」と「売れない本」その2

 や、テレビで紹介されたとか、アニメ化・映画化とかの前に、しかもコミックでもない小説で、あれほど一度に問い合わせが殺到する例はあまりないので、よく覚えています。


 人気が出るにしても、普通はもっとゆっくり。

 自分は、コミック担当だったので、コミックの例で説明しますが……

 (例が多いので、出版社、ISBNなどは省略します)


 コミックの場合、マンガ雑誌に連載中から徐々に話題になり……①巻が出て、少しずつ問い合わせが増え……重版がかかり……週間売上ランキングに名前が載るようになって……他の雑誌(「ダ・ヴィンチ」とか、「このマンガがすごい!」とか)や、ネットでよく取り上げられるようになり……さらに重版がかかり……新刊が出るたびにランキングが上位に上がるようになって……で、巻数が揃った頃にアニメ化が発表され……全巻重版がかかって……アニメもヒットして……重版は止まらず、人気爆発! みたいな。


 あくまで、自分が勤めていた店と、そのグループ内の週間売上ランキングと、店頭での実際の感触なので、全体的に正しいのかどうなのかはわかりませんが……ブレイクするタイミングは、ものにより少し違う気がしました。


 雑誌掲載時から話題沸騰で、ヒット確実!で感じだったのは、「DEATH NOTE」とか「暗殺教室」とか。


 「進撃の巨人」は、最初はそれほどでもなかったけど、「このマンガがすごい!2011」(宝島社)でオトコ編1位を獲得した2011年の12月前後ぐらいから売上がぐ~んと伸びて、アニメ化(2013年4月)で爆発した感じ。

 「坂本ですが?」も、それまでは知る人ぞ知る……という感じだったのに、「このマンガがすごい!2013」でオトコ編2位を受賞したころから、どかんと。


 アニメ化で確実に化けたのが「黒子のバスケ」で、それまではジャンプ系コミックにしては、新刊が出てもランキングは下の方だったのが、アニメのヒットでファンがどっと増えて、①巻はもちろん、既巻も超売れましたね~。


 「黒子のバスケ」と言えば……小説版ノベライズ。「黒子のバスケ Replace」も、よく売れて、あのころ毎週のように注文を出していました。


 コミックのノベライズは、昔はコミック版のストーリーをそのままなぞるようなものが多かったですが、今は番外編的なものが多いですね。マンガでは描かれていない主人公やライバルたちの中学時代とか、学園生活とか。


 原作ファンなら、原作に描かれていない好きなキャラのことをもっと知りたい。確かに。


 ただ、原作を読んでいないと、なんのこっちゃ? なので、実際に買ったのは、原作コミックを全巻買ったファンの、さらに何割かだと思うのですが……それでも、教養系の多い新書ランキングの上位独占でした。


 ちなみに、自分は「どこまでいっても原作派」。

“小説版を読めば、原作がなお楽しめる”ってのはいいのですが、“小説版を読まないと、原作が楽しめない”というのは、ちょっと困る。あくまで原作派です。



 「カゲロウデイス」があんなに売れたのは、普段あまり本は読まない層……あの曲の物語が知りたいボカロ曲のファンが、買いに来てくれたからなのでしょう。


 あの曲を聴くと、確かに物語がすんごく知りたくなる。謎が、気にかかる。

 でも、曲を全然知らないひとにとっては……どうなのでしょう?


 人気コミックのノベライズは、よく売れるけど、原作以上には売れないです。


 

 “観てから読むか、読んでから観るか”



 有名なキャッチフレーズがありますが、“読んでから観る”……小説を読む方から入る読者さんって、もう少数派になってしまったのでしょうか。そう考えると少し淋し……



 ……あ。


 それで、今、思い出しました。そういえば、自分が最初に買った本って、テレビ観て好きだった


「刑事コロンボ」


 でした。しかも、今の二見文庫版じゃなくて、さらにもっと古い奴。

 うああ~。自分、全然ひとのこと言えないですね。



 ……ま、いいか。入口はどこでも。

 本を手に取ってくれるなら。


 少しでも、読む楽しみを知ってくれたなら。

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