「売れる本」と「売れない本」その3 もしくは、PV数が伸びないとお悩みの方へ
続きまして、売れない本の話をします。
自作のPVが伸びないとお悩みの方も多いようですが……実際に商業出版された名の知れたプロ作家さんの本でも、ベストセラーになるものは、ほんの一握り。
プロの書いた小説でも、売上ランキング常連の人気作家の新作とか、メディアで話題の本とかでなければ、町の書店では3ヶ月に1冊でも売れていればいい方ですよ。いや、マジで。
昔、小説の新人賞を受賞してデビューした新人作家さんの「これで僕の本は永遠に残る」みたいなコメントを雑誌で読んだことがあるのですが、本屋で働いての実感では……残らないです。よほど売れるものでない限り。
少なくとも、本屋には。
本が一番よく売れるのは、一般的に発売して2週間って言われています(ベストセラーになる本は、あまり一般的ではないです)。
書店に入荷した新刊本は、書店員の手によってそれぞれのジャンルの新刊コーナーか、棚に並べられます。
売れた本は、取次さんを通じで注文が出され、お店に入荷したら書店員によって棚に補充され、再び次のお客様が手に取ってくれるのを待つことができます。
売れない本は、棚から抜かれ、取次さんを通じて版元さんに返品されます。
せっかく書店の店頭に並べることができても、売れなければ……売れなければ! 3ヶ月も立たないうちに、そうでなくても次々と発売される新刊や、売れた本にその場所を譲らなければなりません。
新刊として取次さんより書店に送られてきた本の代金は、その3ヶ月後に書店に請求されるので、売れる見込みのない本は、それ以上本屋に置いておけない。
……厳しい世界です。
もちろん、本屋の店頭になくても、どこかでその本のことを知り、読みたいと思うひとがいれば(版元さんか取次さんに在庫があれば)取り寄せることはできます。でも、本屋の店先で新しい読者と出会う機会を失ってしまった本のことを……どれだけの読者が知るというのでしょう?
そこで、自ら書かれた作品を紙の本にして本屋に並べることをお望みの皆さまに、元書店員としてのお願い。
本は、タイトルが大事です。
なぜかここではアオリ文やレビュータイトルの方が目立つようになっていますが、実際の本屋の店頭では、本のタイトルと著者名の方が大事です。大事なことだから、二度言いました。
確かに、表紙が良くて売れる本や、帯のアオリ文が効果的で、お客さまが本を手に取ってくれることはあります。でも、全国の書店で全ての新刊の表紙を見せて並べること……平積みや面陳にはできません。
(本屋に平台に表紙を見せた状態で本を数冊積み上げて並べることを“平積み”、棚に数冊表紙を見せた状態で置くことを“面陳”、背表紙を見せて並べることを“棚差し”といいます。念のため。)
理想を言えば、本は通路側の棚のお客さまの目の位置の高さに……さらに欲を言えば、POP(できれば版元さんに作ってもらったのと、書店員さんにその本の魅力を紹介した手描きの)をつけて並べることができれば最高ですが、全ての本にそんな贅沢は望めますまい。
都市の大型書店ならともかく、地方の小さな本屋なら、発売日に1冊でも入荷するだけましってところも多いはず。1冊だと平積みにはできないし、棚にスペースがあれば、面陳にすることもできますが、そうでなければ棚差しにするしかないです。
背表紙にはタイトルと著者名しかありませんから、棚差しだと、いくら表紙が良くっても、帯に興味をそそるアオリ文があったとしても、そもそもその本を手に取ってくれないと、お客さまはそれを目にすることはありません。
ですから、本にはぜひいいタイトルを!
それも、本棚で足を止めたお客さまが、そのタイトルを見ただけで、その内容が気になって手に取りたくなるような、そして一度見たら二度と忘れられないようなタイトルを!!
どんなに表紙が良くても、内容が面白くても、そもそも本を手に取ってもらえなければ、勝負する前に負けてしまいますから。
1冊の本を本屋の並べられる時間は、実はそんなに長くないです。少しでも多くの読者が、その本を手に取ってくれるように願いを込めて……。
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