春と変態電話

 ……なんだ、このタイトル。


 そんな疑問はさておきまして。


 春ですね。

 春と言いますと、皆さまは何を思い出しますでしょうか?


 満開の桜。お花見。両親に手を引かれ、入学式に向かう新一年生。


 いいですね。


 あと花粉症とか……あまり嬉しくないものをくしゃみと目のかゆみで思い出す方もおられるでしょうが、元書店員の自分が春といえば思い出すのが、春の新学期商戦……ではなくて。

 


 変態電話です。



 変態電話とは? 変態から掛かってくる電話のことです(そのまんま)。


 書店には、お客様から、「〇〇という本、ありますかー?」という問い合わせの電話がよく掛かってきます。


 欲しい本があるとき、行った書店にその本がないと、がっかりするし、無駄足になりますから、あらかじめ在庫があるかどうか確かめてから足を運ぶほうが合理的です。

 また、レジに取り置いてもらえば、探す手間も省けますし、他のひとに買われてなくなる心配もなくなります。


 というわけで、書店ではお客様から本の問い合わせの電話がかかってくると、本のタイトルを聞いて、店内の在庫を確かめ、本を探して「〇〇ですね。在庫ございます」とか「申し訳ございません。その本は入荷していないようです」とか答えるわけですが。


 変態電話とは、男の声で、本の問い合わせを装って、性的なというか……エロいというか、卑猥というか……まあ、そういう言葉を女性の書店員に言わせようとする、悪質ないたずら電話のことです。

 実際、そういう電話を取ってしまった同僚(女性)の話によると、

 


 「その熱く、ドロドロとした××を……」



 これ以上書くとセルフレイティング表示をしなくてはならないので、後に続く文章は想像にお任せしますが、とにかくそうゆう言葉をこちらに復唱させようとしてくるのだそうです。


 ベテランの書店員だと、まともなお客様からの電話じゃない、すぐピンときて対処できるのですが、入ったばかりのアルバイトの女の子(大学生)が、何も知らずに電話を取って、セクハラ被害を受けてしまうことがありました。


 向こうにしてみれば、思う壺。してやったり、というところでしょうが、こちらにしてはこの忙しいのに、迷惑この上ない。まったく、許せません(怒)。


 自分が勤めていた書店は比較的平和な店でしたが、グループ内の書店で発生した万引き、盗撮、不審電話などの情報は、本部を通じてFAXで全店に送られてきます。

 そういうのは年中ありましたが、こういう変態電話は、季節の変わり目……なぜかに春に多かった気がします。


 だから、書店員時代、そういう電話がかかってくると、


 「……ああ、春だなあ」


 と思ったわけで。


 この変態電話。全国的にあるものかどうかはわからないし、自分が書店に勤めていたころから大分経ったし、時代も変わったので、今もあるかどうかはわかりませんが(なくなっていることを願いますが)……。


 もし、この文章をお読みの方が女性で、書店でアルバイトとかをすることになる(もしくは、現役書店員の)方がいて、万が一、そんな変態からの電話に出てしまうことがない、とは言い切れない(ないことを祈りますが)ので、被害を受けないために、その対処方法を紹介します。


 その1 店内に男性スタッフがいる場合……電話を代わってもらいましょう。

     変態電話は、男性が出ると、すぐ切れます。


 その2 店内に女性スタッフしかいない場合……相手が変態だと確信したら、すぐ切りましょう。


 その3 あやしいと思うけど、確信が持てない場合……まず、落ち着いて、こう言います。



 「本の在庫を調べるのに時間がかかることもございますので、こちらから掛け直します。お客様のお名前と、ご連絡先のお電話番号をいただいてよろしいでしょうか?」


 これで大丈夫。本当のお問い合せなら、相手は名乗ってくれますし、名乗れない方は、電話を切るしかないので。


 以上、春のお話でした。


 

 次回こそ、「売れ続ける本」と「売れなくなる本」の続きです。

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