「何の本をお探しですか?」その3。

 その2。から続いています。


 やはり、テレビとかで名前の知られた有名人の方の本は、著者名でのお問い合わせが多いのですが……そうでない作家さんの場合。


 売れている作品は作品名で、売れている作品がいくつもある作家さんの場合は作品名の他に作家さんの名前でのお問い合わせもある、という感じでしょうか。


 ちなみに。


 有名な文学賞を受賞した! とか、映像化して大ヒット! とか、作品が注目されると、それを書いた作家さんの他の作品も動く(売れる)ようになります(うまくいけば)。

 だから、そういう注目作があるときは、同じ作家さんの書いた別の本も在庫チェックして、なければ注文して、その隣に並べておくことが必須でした。

 んで、話題の本コーナーとか、レジ前のワゴンとか、目立つ場所に移動して、○○(作家さんの名前)フェアのPOP作って……ってな感じです。


 ハマればそちらも、即重版。週間売上ベストランキング100位以内もイケるぜ!

 うふふふふ……。


 閑話休題それはともかく


 カクヨムで作品をより多くの読者さんに読んでもらうためにキャッチコピーが重要なことは皆さんがおっしゃることですが(タイトルが大事なことは自分が前からしつこく言っていることですが)、キャッチコピーが重要なのは、あくまで“その作者の方を知らない読者が作品を手に取るまで”ですわ。


 作者さんの名前が大事になるのは、“その作品が読まれてから”。


 例えば、リアル新刊書店の新刊台でなんとなく本が目についたとき。表紙がいい感じで、好きな作家さんが帯に熱の入った推薦文を書いていたから、面白そうだと思って、知らない作家さんの本を買ったとします。


 その本を読んで面白かったら。その作家さんの新しい作品も読んでみたいと思います。待ちきれなくて、その作家さんの別の作品を書店の棚で探すかもしれません。帯はあってもなくても、帯文キャッチコピーはどうでも即買い! ですね。この作家さんの作品が好みに合うのは、わかっていますから(※1)。


 でも、期待外れで、つまらない・好みに合わないものだったなら。

 これからその作家さんがどんな作品を出そうとも、ちょっとやそっとでは、その本に手を伸ばすことはないでしょう。表紙や帯文は、もう関係なくスルーです。


 書店員としても、お問い合せのお客様が探している本の作家さんの名前を覚えていると――特に小説やエッセイの場合、とても助かります。


 そこの本屋さんの棚にもよりますが、四六版の小説やエッセイの単行本だと出版社関係なく著者名五十音順に、文庫だと出版社別→レーベル別→著者名五十音順に並べられているので、作家さんの名前がわかると本がとても探しやすいのですよ(※2)。


 本のお問い合せを受けたとき、書店員はお客様が知っているその本の情報(タイトル・ジャンル・著者名・その本を出している出版社・その本を何で知ったかetc)をなるべく多く聞き出してその本を探す手がかりにします(※3)。


 だから、カクヨムでも作家さんの名前で検索できるようになればいいと、自分は思うのですよ。


 著者名での検索ができないのは、プロが有利になりすぎて順位が固定化する、という理由だそうですが、どのみち同じです。書籍化してリアル新刊書店に並べばどのみち、プロどころか、多くのファンを抱えたベストセラー作家や、文学史に名を残す文豪とガチ勝負することになるんですから。


 ならば、読むひとにとって探すのに少しでも便利な方がいい。


 その名前がひとりでも多くの読者ファンに信頼されるものでないと、生き残ることはできません。



※1 ラノベの読者は、この”作家買い”をするひとが少ない気がします。シリーズのまとめ買いは多いんですか……。

 

※2 なので、著者名が難解な漢字とか横文字とかでなんと読むかわからないと、本の品出しをする書店員が地味に苦労します。紙の本での書籍化を目指すなら、ぜひ読みやすいお名前ペンネームで!


※3 超売れている本なら、タイトルの一部だけでも略称でも書店員にはすぐにわかります。というか、わからないと困ります。


 

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