潰れた本屋の元店員は、対象読者別というのを解説する。②ティーン向けラノベ

 ②ティーン向けラノベ


 ラノベ――ライトノベルに決まった定義はないそうですが、マンガやアニメ絵のキャラのカラーイラストが表紙で本体価格が500~600円前後の文庫、というのが一般的なイメージでしょうか。


 でも、ライトでない……それこそ日本文学を代表するような名だたる文学作品にだって、文庫のカバーに人気アニメのキャラや有名マンガ家さんのイラストを起用していたりするし、広い意味で軽い小説ライトノベルには違いないケータイ小説のカバーは、レーベルにもよるけどアニメ絵のじゃない……おしゃれなかわいい表紙が多いです。


 個人的には、ラノベは“字だけで書いたマンガ”……映像化するのにアニメがいいのがラノベ、実写のドラマがいいのが普通の小説……つまり、マンガやラノベは2次元で、普通の小説や実写が3次元のものだよね、とか漠然と思っていたのですが。


 コミックの原作でも(青年マンガや少女マンガでは)アニメ化より先に実写化するし、昔と違って最近では実写でも原作のイメージを壊さずに世界観を忠実に再現している作品が多いので、そう言い切るのも無理があるんじゃないかって気がしています。


 ラノベのレーベルから出ている作品だけがラノベで、そうでないものが普通の小説、と言い切るならわかりやすいのですが、なら、書籍化する前の作品では?


 作者さんがラノベのつもりで書いた作品ならラノベ? 編集者さんが「これはラノベではないですね」と言ったらラノベではなくなるのでしょうか?


 ラノベと普通の小説の境目線は? その作品が軽いライトか、重いヘビーか、決める秤はなんなのか? 自分は、考えれば考えるほど、わからなくなるのです。



 ところで。


 話は戻るようなのですが、リアル書店の児童書コーナーで、角川つばさ文庫さんをはじめとして集英社つばさ文庫さん、講談社青い鳥文庫さんなど、新書サイズの児童文庫が並んでいるコーナーをご覧になったことはありますか?


 カラフルでかわいらしいアニメ絵のカバーの本が平積みされていますね。カバーにはラノベで活躍されている人気のイラストレーターさんのものもある。また、元々はラノベや普通の大人向けのレーベルから出ていた作品も、人気マンガのノベライズもあります。現役書店員の頃は、小学生の男の子のお客様によく「ケロロ軍曹」のノベライズのお問い合わせを受けましたっけ。


 一見するとラノベみたいに見えるけど、“ラノベ”じゃない。“児童書”。


 児童書……児童(8~13歳)向けと、ティーン(13~19歳)向けラノベの違いって何か、お分かりでしょうか?


 児童向け……児童書や学参(学習参考書)は、大人が読者子どもに買ってあげるもの。子どもが大人にお金を出してもらって買うもの。


 いくらお店で「買って~!!」と泣いて騒いでも、保護者さんの許可が下りなければ、買ってもらえないものなんです。


 一方、ティーン向けラノベやコミックは、読者が自分のお小遣いで買うもの。


 自分のお小遣いだから、何を買うのも自由。許可は必要ありません。もちろん、お若いお客様にもご自身のお金で難しくて高くて固い本を買っていただくのは大歓迎! ですけど、残念ながらそんなかたは多数派ではないでしょうから、お若いかたが楽しむために読むなら、手に取りやすい表紙で、読みやすい文章で、買いやすいお値段がいい。


 夏休みの課題の読書感想文や、辞書や、参考書を買うお金は保護者に出してもらうものですが、親には知られたくないけど読みたい本ってありますよね? 


 もちろん性描写とか暴力描写とかのガイドラインは必要で、成人向けはアウトですが、読者が楽しめるギリギリセーフであればいい。ラノべは、お母さんやおばーちゃんに買ってもらうものではありませんから。


 ラノベの感想文は、書いたら学校じゃなくて版元さん経由で作者様に送ろう!


 お年玉やお誕生日プレゼントには図書カードNEXT! ……って隙あらばのダイマ(ダイレクトマーケティング)はともかく、


 13~19歳の読者が自分のお小遣いで買って楽しむために読む小説。それが、“ティーン向けラノベ”だと自分は思うんですよ。




 さて。今回はいつもの文字数をかなりオーバーしてしまいましたが。


 この文章お読みのかたが、物語をお書きになる作者様であるならば。


 あなたのお書きになる小説は、“13~19歳の若い読者が、お小遣いで買って読みたいと思う小説”でしょうか?


 もし、「YES」であるならば。


 異世界ファンタジーでも、現代ファンタジーでも、SFでも、恋愛でも、ラブコメでも、現代ドラマでも、ホラーでも、ミステリーでも、エッセイ・ノンフィクションでも、歴史でも、時代でも、伝奇でも、ケータイ小説でも、あるいは文学でも! 


 それは、“ティーン向けラノベ”。


 間違いありません。



 ※追記

 2018年3月13日、成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案と関連法の見直し案が閣議決定されましたね。

 だとすると、”ティーン向けラノベ”の対象年齢も”13~18歳まで”。

 R18の境目がわかりやすくなりました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る