第8話 栗拾い

 そろそろ栗がたくさん落ちるころだ。

 そう思って朝から山道を散歩。あるある。イガに包まれた栗がたくさん。

 イガが半分裂開して、中からつやつやの実が仲良く並んで顔を見せている。

 さあ、今日もお裾分けをいただくのだから、挨拶しておかないと。


「山の神様、今日は栗を分けてください」


 イガの端っこを踏んづけて押さえ、そのままエイッと広げると、中の栗がツルンと顔を出す。それを取り出して袋に入れていく。

 たまに小さなイモムシが出てきたりするので、その辺の葉っぱの上に避難させるのも大切な仕事。このまま茹でちゃったら可哀想だからね。


 こういう作業はついつい夢中になってしまって、気付くととんでもない量になっていたりするんだ。今日も例に漏れず大収穫。

 栗ご飯を作ってもまだまだありそうだな……そうだ、渋皮モンブランを作ろう。僕の大好物。律ちゃんのお家にもお裾分けが出来そうだ。


 家に帰って栗をよく洗う。

 そのまま暫く水に浸しておくと中にいるイモムシさんが出て来る。出てきたところで拾って庭に逃がしてあげるんだけれども、このままその辺に逃がしてもこの子たちは生きていけないから、一緒に拾って来たたくさんのどんぐりのところにそっと置いておくんだ。どんぐりの中で成長してくれることを願って。


 少し水に浸けて被害者が出なくなったことを確認したら、今度は下茹で。これは栗を茹でるというよりは、皮を剥きやすくするために皮を茹でている感じ。

 ザルに上げたらまずは問答無用で半分に切る、これとても大切。こうすると皮が剥きやすくなるんだ。まあ尤も、ここで半分に切ってしまうからまるまるそのままの栗が入ることは無くなってしまうんだけれども、僕しか食べないから関係ない。


 ついでに言うと、栗だけよりもいろいろな山の幸を一緒に入れたものが好きなんだ。

 春先に貰ったたけのこ。塩漬けにして保存中のものがある。わらびも塩漬けにしたものがあった。これを引っ張り出してきて一緒に炊くんだ。

 塩抜きにはちょっとしたコツが要る。水で流してはいけないんだ。水で流すと旨味までみんな流れてしまう。だから薄い食塩水に浸けて塩出しをする。これを「呼び塩」と言うらしい、近所のおばあちゃんから教わった。


 塩漬けの筍と蕨の塩分があるので、炊くときには塩加減に注意が必要。

 栗、筍、蕨、それから人参と椎茸、油揚げを入れて、味醂と酒を入れたらあとは出汁で炊くだけ。簡単『秋の山の幸ご飯』。


 さて、秋の山の幸ご飯を炊いている間に、僕の大好きな『渋皮モンブラン』を作ろうか。これも難しそうで案外簡単なんだ。


 ……あ、それは僕の作り方がいい加減だからか!

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