第2話 お買い物
今日は久しぶりにお買い物。
野菜は家で作れても、さすがに他のものは作れない。
ティッシュと、トイレットペーパーと、電池がもう無くなってしまうなぁ。
そうそう、洗濯糊も買わないと。
洗濯糊、この悪魔的な響きに僕はとても弱い。割れないシャボン玉やスライムを作って楽しめる。
あ、そうだ、スーパーボールを作って遊ぼうか。
もうすぐみんな夏休みに入るから、あの二人も遊びに来るでしょう。何かに似せて作ろうかな。
黄緑なら青梅。
お婆ちゃんが梅酒を作るとき手伝ったなぁ。
大きな氷砂糖を入れて、綺麗な黄緑色の梅を敷き詰めて。
小さな氷砂糖の欠片を口に含んで、楽しかった。
赤なら
大きく膨らんだ
提灯みたいに見えるから「鬼灯」という字を当てるのも納得できる。そういえば、英語ではChinese lanternだったっけ。
黄色なら
雀瓜はゴーヤと一緒にたくさんぶら下がっている。
まだみんな黄緑色だけど、これから黄色や赤になるんだろう。スイカのような白い模様が可愛らしい。
そんな楽しい夏休みを想像して、お店でクスッと笑ってしまった七月の夕方。
レジで僕の前に並んだ男の子が花火を握りしめているのを見てしまった。
あああ、もう止まらない、楽しい妄想。
炎色反応が見たい。
どうしても見たい。
家に帰ったら早速やろう。
ワクワクしながら家路に就く。実験は考えているときが一番楽しい。
ホウ酸とミョウバンはあったな、ホウ素とカリウムはこれでOK。あとは……ナトリウムも台所にあるし、カルシウムあったかな。
ふと、道端に何か小さな黒っぽい物体発見。
ずれた眼鏡を押し上げてよーく見ると……アブラゼミ君? こんなところでひっくり返ってどうしたんですか?
セミ君の前に指を一本出してみると、セミ君、つかまってくれました。
でも、なんだか弱っていますね。
木につかまれますか? うーん、無理みたいですね。
ではせめて、常緑低木の近くに置いてあげましょう。
君が力尽きたとき、ここで土に還れるように。
それまで、精一杯生きるんですよ。
この時期の帰り道はいつも少し悲しい。
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