第14話 夏の終わりに
ランタナに黒い実がついている。
去年は無かったのに、いつの間にか庭の片隅に生えていた。
鳥による動物被食散布の典型例。
この庭でできた実もヒヨドリかムクドリが食べて、どこかに散布してくるのだろう。綿々と受け継がれる命のバトン。
そういえば、ランタナの種子には毒があった筈。
哺乳類が種まで齧ると大変な事になるけれども、鳥類だと実しか食べられないから害はないらしい。
そうやって種を鳥に運んで貰って、子孫を増やす。上手くできてるものだなぁ。
我が家の常連、ツマグロヒョウモンさんのメスもそうだ。カバマダラさんと言う毒蝶にそっくり模様を似せて、身を守ってる。
カバマダラさんたちは、幼虫の時にトウワタを食べてそのアルカロイドを体内に蓄積するんだ。成虫になってもその毒をしっかり貯め込んでる。
彼らをうっかり食べてしまった鳥さんたちは大変な目に遭って、二度とカバマダラさんには近寄らない。
そんなカバマダラさんの真似っこをしているのがツマグロヒョウモンさん。それもメスだけがカバマダラさんに似てるんだ。子孫を残さなきゃならないから。
こんな、モデルとミミックの関係が自然界にはいくらでもある。
この庭で、植物も動物も、命を引き継ぐことの尊さを僕の目の前に突きつける。
ナミアゲハさんが飛んでいる。
二匹でじゃれ合うように。
そこにもう一匹割り込んで、三匹でひらひらひらひら。
一匹のメスを二匹のオスが争っているのかな。
そこにアオスジアゲハさんが乱入してみんなバラバラ。当のアオスジアゲハさんは知らん顔で、もうどこかへ行ってしまってる。
くすくす……。
人間界でもよく見る光景。
急がないと夏が終わってしまいますよ。
君たちの季節はそう長くない。
ツマグロヒョウモンさんが僕の目の前の
その顔は「君がそれを言うの?」って笑っているように見えた。
それもそうですね。
僕はいつまでこうしているんでしょうか。
今日はツマグロヒョウモンさんに一本取られてしまったかな。
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