第2話 カラーパレット

 我が家の庭も随分春めいてきた。

 ついこの前まで真っ白な雪が覆いつくしていたのに、今では同じ白でも、咲き乱れる大待雪草スノーフレークの花に場所を譲っている。花の先端にあしらった緑色の水玉がなんともお洒落さんだ。


 うちの庭の春は白に始まり、黄色、ピンクと移行していくカラーパレット。

 その先頭バッターが大待雪草で、二番手が水仙なんだ。

 我が家の水仙は『日本寒咲種』と呼ばれるもので、福井の海岸が有名な、あのクリーム色のタイプ。

 この頃になると、メジロやジョウビタキが次々に遊びに来てくれる。この子たちの愛らしい仕草は何時間眺めていても飽きることがない。


 さて、庭が白からクリーム色になったところで黄色の出番。

 原種水仙のバルボコディウム。小さなカップが印象的な、可愛らしい黄色の花。

 続いて山茱萸さんしゅゆ。すこし前にヒヨドリが最後の一粒の実を啄んでいったと思っていたのに、もう花が咲いている。線香花火のような花は、遠目にはホワホワした雰囲気に映る。

 そして我が家の庭を占拠する大金鶏菊おおきんけいぎくがじわじわと咲き始める。この花が満開になる頃には、庭一面が黄色で覆いつくされてしまうんだ。


 そんな頃にふと視線を上げると、夏にオレンジ色の花がつくはずの凌霄花のうぜんかずらの木に、何故か黄色の花がたくさん咲いていることに気づく。

 カロライナジャスミンだ。

 つる性なので、花期の被らない落葉低木に絡みつくようにと考えて、凌霄花の足元に植えたものだ。

 しかも我が家の凌霄花は時期によっていろいろな花が咲く(?)

 四月はカロライナジャスミンが黄色の花を咲かせ、五月は絡まってきた琉球朝顔が青紫の花で木を染め上げる。六月になってやっと本来の凌霄花の冴えたオレンジ色の花が咲き、七月にはこぼれ種で増えたルコウソウが這い上がって、紅白の花をつける。

 一本の木で五色の花が楽しめてしまうんだ。

 恐らく本人(本木?)はいろいろな蔓性植物に巻き付かれて、迷惑しているだろうけれど。くすくす。


 ああそうだ、陽向先生のお宅にハゴロモジャスミンがあると言ってたな。少し分けて貰って挿し木にしたら、カロライナジャスミンの頃に一緒に楽しめるかもしれない。

 元気な黄色と淡いピンクが一緒に絡まって咲いていたら、さぞかし綺麗だろう。


 背の高い大金鶏菊と小さなダールベルグデイジーに埋め尽くされた後は、我が家の庭は一気にピンク色になる。

 サポナリア、庭石菖にわぜきしょう撫子なでしこ、ランタナ……みんなピンクだ。

 そして初夏には濃いピンクの百日草ジニアで埋め尽くされる。ナミアゲハさんやキアゲハさんの季節だ。


 今年も来てくれるだろうか。たくさんの小さな生き物たち。

 待ってるよ。

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