第2話 乾燥野菜を作ろう

 僕は朝起きると最初に新聞を読む。

 一面からは読まない。最初に見るのは天気図だ。

 低気圧、高気圧、風向、風力……今日は快晴だな。まさに乾燥野菜日和。

 ほんの少し乾燥させるだけでも旨味がギュッと濃縮されて、格段に美味しくなる。


 何を干そうか。

 僕の一番のお気に入りはエリンギ。次いでマイタケ、シイタケ。茸ばっかりだな。

 根菜類もお気に入り。

 ジャガイモ、サツマイモ、ニンジン、ダイコン、カブ、レンコン。一通り皮を剥くけれども、その皮も千切りにして干してしまう。

 思いがけず美味しいのが実野菜。

 ピーマン、パプリカ、ズッキーニ、ナス。

 それから忘れちゃいけない、バジル。もう雑草化してる……くすくす。


 **


 おや、この元気のいい声はあの二人ですか。


「先生何やってるの?」

「これから野菜を干すんですよ」

「やりたーい!」


 ちょうどいいお手伝いさんが来てくれました。

 縁側にむしろを敷いて、ザルを準備して。

 バジルの葉っぱはザルに広げてください。

 エリンギは手で裂いて。

 僕が薄切りにした根菜類は、水分をよく取って筵に並べてください。

 ああ、皮は捨てないんですよ。千切りにして干しておくと、金平にできます。


「これどうするの?」

「このままお日様に任せておくんですよ」


 **


 風は穏やかに涼しいけれど、日中の太陽は夏の名残が感じられる。これなら夕方には立派な乾燥野菜が出来ているだろう。


「あー楽しかった」

「お疲れ様でした。冷たいカルピス、飲みますか?」

「飲むー!!!」


 二人の元気な返事に、風鈴が負けじと涼しげな音を立てている。

 この風鈴も、豚の蚊遣りも、もうすぐ片づけなければなりませんね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る