第14話 春の予感

 今日はいいお天気。春の足音が近づいてきているのがわかる。

 庭のかまくらはまだ残ってはいるけれど、そろそろ危なくて入れない。

 すぐ隣に置いてある雪だるまも、なんだか元気が無くて情けない顔になっている。

 その雪だるまで遊んでいるすばしこい小さな影が一つ。

 かまくらの影にも真っ白いもう少し大きな影が一つ。

 すっかり仲良しになったようですね。


 **


 そういえばいつだったか、かまくらの周りに足跡がたくさんあったなぁ。

 ストーブの前でいつものようにコーヒーを飲みながら本を読んでいたら、何やら庭からミミズクさんの鳴き声が聞こえて来たんだ。

 窓ガラスが曇っていてよく見えなかったけれど、かまくらの周りに動き回る小さな影がたくさん。

 翌朝かまくらを見に行ったら、たくさんのいろいろな足跡が残っていて笑ってしまった。どうやらここで小さな動物たちがパーティーをしていたらしい。


 その足跡もその後に降った雪に掻き消され、お正月に遊びに来た子供たちの足跡に上書きされて、今ではお陽さまに融かされてしまった。

 お陽さま。

 クリスマスイヴの日に決めた、秘密基地の合言葉。

 基地はもう融けてしまいそうですよ。くすくす。


 **


 もう少ししたら、このかまくらも取り壊そう。

 小さな生き物さんたちが生き埋めにならないうちに。

 今のうちにたくさん遊んでおいで。うさぎさんもこりす君も。


 来年も覚えているかなぁ、合言葉。

 彼女も覚えているかなぁ、合言葉。

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