第8話 火遊び
僕の楽しみの一つに火遊びがある。
燃焼用のアルコールを燃やすだけなんだけれど。
実験は考えているときが一番楽しくて、準備しているときは二番目に楽しい。
ホウ酸と、ミョウバンと、塩と……あ、そうそう除湿剤の粒を粉にしたんだ。
それを溶かすための精製水、燃焼用のエタノール。
100㎖のビーカー4つと、燃焼皿4枚。
何の上でやろうかな? ちょうどいいトレイは無いかな?
バーベキューの網を使おう。これで完璧。
実験になるとすぐに匂いを嗅ぎつけてやってくるヤモリ君。いつものように人体模型君と一緒に見学ポジション。
上皿天秤を出してくると、いつもお利口さんにしているヤモリ君がなんと皿の上に乗りに来た。
体重、測って欲しいのですか?
ヤモリ君、じーっとこっちを見ています。……かわいい。ああ、もう、可愛いのは罪ですね。じゃ、動かないでくださいね?
分銅をちょっとずつ乗せて……。
そういえば板状分銅の名前を聞かれたことがあったな。これも分銅ですよって言ったら残念そうにしてた。特別な名前を期待していたのかな。
ふむふむ、案外体重ありますね。28gでしたよ。
ヤモリ君、満足げに上皿天秤から降りました。
さあ、次は薬包紙の出番。20gくらいでいいかな。
まずはホウ酸。ビーカーに入れて、と。
次にミョウバン。これを常備している一般家庭はあまり無いだろうな。
それから食塩。これは台所にいくらでもある。
あとは除湿剤。我が家の除湿剤は、使用目的が一般家庭と若干違うような……。
おや? お客さんがまた一人来ましたね。
こりす君ですか。君とヤモリ君は本当に実験が好きですね。
でもね、今は準備だけなんですよ。暗くならないとできないんです。
ここから先はまた後で。二人が来てからね。
**
さあ、暗くなりました。さっきは小さなお客さんが居たんですが。
準備は万端、あとはちょっとの細工ですぐにできます。
君たちも手伝ってください。
4つのビーカーに10㎖ずつ精製水を入れて、よーく混ぜますよ。
この精製水はただの溶媒です。これだけじゃ燃えません。ここにエタノールを入れるんですよ。
これも10㎖ずつでいいでしょうか。割と適当ですが、4つとも同じ条件ですよ。
ではこれを燃焼皿に入れて、バーベキューの網に並べて外に出ますよ。
いい感じに真っ暗ですね。では火を点けてみましょうか。
きゃあきゃあと楽しそうですね。でも一番盛り上がっているのは多分僕です。
では、火を点けますよ。わくわく。
ほら、綺麗でしょう?
お鍋が噴きこぼれた時の炎の色は、ナトリウムの炎色反応なんですよ。
さあ、どれがどれだかわかりますか? 学校で教えましたよ?
紫、オレンジ、黄色、緑……。間違えたら補習です。
って言ったら、二人とも急に口数が少なくなりました。
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