魔力が、尽きる





「ちょっと、なんなのよアレ。アルテナはいつから人間兵器なんか使うようになったのよ」



 イギルは、補助魔法でシールドを貼りながら神宮を観察していた。



「でも、まだ兵器でも試作段階ってとこね。隙を突けば、刺せる。ちょっと、そこの禿げ!」



 イギルが叫ぶ。



 黒ローブが振り向いた。



「え、私ですか?」


「そうよ、アンタしかいないじゃない!」


「は、はぁ」


「アンタ、囮になりなさい。その間にアタシがあいつを殺すから」


「え、いやでも……」


「この計画がおじゃんになってもいいの?」



 イギルは、冷たい目で黒ローブを睨みつけた。



「いや、それは……分かりました」



 黒ローブは、渋々神宮のもとに走って行った。



「ククク、帝国騎士団の団長を殺ればアタシの用心棒としての株も上がるわ、ハハハ」



 イギルは赤いマントを羽根のように広げ、飛び立った。





「ひぃいいいいい」



 黒ローブは尻に火を付けながら、必死に逃げ纏う。



「ラクガキ、ケセ」



 神宮は、炎の剣を振るう。


 その炎は凄まじいものであったが、やはり神宮の魔力は無限ではなかった。


 徐々に魔力は減っていき、やがては尽きる。


 しかし、今の神宮は魔力をコントロールする術を持たなかった。



「カミノケ、カエセ」


「ぎゃあああああああああ」



 神宮が炎の剣を振り下ろそうとした時、



「ライトニング」



 イギルの光魔法が神宮に直撃した。


 神宮はすぐに身を翻して反撃しようと試みるが、炎が消えた。


 魔力が、尽きたのだ。



「ふっ、トドメだ、イヅナの騎士よ」



 イギルは、青白く光る魔法の矢を具現化し、それを神宮に向けて放った。


 矢は、神宮の胸を目がけて真っ直ぐに飛んでいった。


 神宮は、もう動けない。


 矢が、神宮の胸に突き刺さる――



 その時、矢は鋭い閃光によって弾かれた。


 鳳来の刃だった。



「待たせたな、神宮」


「おや、騎士団の紋章が2つに増えた、アハハハハ」



 イギルから、数本の魔法の矢が放たれた。

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