よく捕まるサリア





 トリルの古城。


 その地下。

 詠那とサリア、時子とみられる女性は、魔術の縄で縛られ、牢屋に拘束されていた。



「サリア、よく捕まるよね」


「えへへ、そうですね」



 サリアは後ろで腕を縛られていたが、笑顔で笑っていた。



「でも、詠那がお友達と会えてよかったです」



 時子とみられる女性は、両手で膝を抱いて無言で座っている。



「それがさ」



 詠那は少し困った表情で言った。



「顔も、眼鏡もそっくりなんだけど、彼女、時子じゃないんだ」


「え?」


「ホント双子かってくらい似てるんだけど、違うみたい」



 それは、親友だからわかる違いであった。



「ごめんね、変な人違いしちゃて」



 詠那がそう言ったが、時子に似た女性は暫く黙っていた。


 そして、間をおいて口を開いた。



「あなた方は、時子さんのご友人なのですか?」



 詠那は立ち上がらんばかりに驚いた。



「時子を知ってるの!?」



「はい……」










「いやぁ、イギル様がおられなかったら危ういところでした」



 黒いローブに身を包んだハゲオヤジは言った。

 詠那たちを誘拐した黒ローブの男だ。



「ホント。あの小娘達、あんたらじゃ手に負えなかったわよ」



 赤いローブに身を包んだ、イギルと呼ばれた大柄の女性は、パイプで煙草を吸いながら言った。


 詠那とサリアは、幌馬車の中で黒ローブ達を軽くボコボコに出来たが、この魔術師イギルによって捕えられたのだ。



「あいつはまだなの?」


「はい、明日の引き取りに来るそうです」


「早くしてよね、こんなかび臭いトコにいたくないわよ」


「ははぁ、もう少しだけお願いします」



 イギルは煙草の煙を勢いよく吐き出した。



「ところで、余分に着いて来た小娘2人、いらないんでしょ?」


「そうですな、見られてますし、処分するしかないです」


「なら、アタシにくれない? 美味しそうな魔力のにおいがする」


「いいですが、ちゃんと処分は頼みますよ。もし彼女らから情報が漏れたら、私も処分されてしまいます」


「大丈夫よ、魂まで一滴残らず搾り取ってあげるから」






 イギルは、その真っ赤な唇を大きく広げて笑った。







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