新たなる旅立ち





「本当にやるとは思わなかったわい」



 黒い月を殲滅させた功績が認められ、約束通り、神宮はサルバの帝国騎士団団長に任命され、詠那、鳳来、サリアは帝国騎士団の騎士となった。





 ちなみに、第1~第5帝国騎士団は女帝イヅナ直属の騎士団で、他の帝国騎士団とは似て非なるものである。



 要するに、更に優秀な精鋭達である。





 ガ―ディスは、領主の方針を無視してスタンドプレーを取ったことによりこっ酷くファリプに叱られたが、結果的に黒い月を殲滅出来たので、それだけで済んだ。









「これが騎士団のバッジか、なんかカッコいいね」



 皆、それぞれ帝国騎士団の紋章を胸に付けた。


 団長である神宮は、腕章を付けた。




「神宮、折角騎士団の鎧が支給されるのに、制服のままでいくのか?」



 黒装束に身を包んでいる鳳来が言った。



「うん、制服の方がしっくりくるし、それに」


「それに?」


「故郷を、少しでも感じていたいんだ。なんか、時々忘れそうになる時があって」




 神宮は、少し照れるようにそう言った。



 それを聞くと、鳳来はサッと部屋を出て、5秒後、制服姿で部屋に入ってきた。




「着替え早っ!!!」



 制服姿の鳳来は、黙々と本を読み、時々神宮に悪態をつく、教室で隣りの席に座っていた鳳来雛月そのままだった。



 なんか、懐かしい気がした。




「わぁ、可愛いですね!」



 そう言ってサリアは鳳来に抱き着いた。



「わたしもその服着てみたいです!」



 サリアは目を輝かせている。



「サリアも似合いそうだよね、今度あたしの着てみる? サリアの服と交換しようよ」



「はい! 交換します!」




 神宮は、サリアの白いワンピースとマントを詠那に重ねてみた。




 うん、イケる。




 そして、詠那の制服をサリアに重ねた。




 うん、めっちゃ可愛い。





 いや、待てよ、サリアはロリだから、黄色い帽子にランドセルもイケるのではないか?





 神宮は特殊なヴィジョン(妄想)を使い、サリアに黄色い帽子を被せ、ランドセルを背負わせる。







 帽子から覗く、クリクリした瞳にぴょんと飛び出すツインテールの髪の毛。




 両手で肩ベルトを握り、無垢な瞳で神宮を見つめながら……、




 「おにいちゃん」







 悪くない……、





 いや、最高じゃないか。







 神宮の求めていた究極系の1つが、そこにあった。








 どこかに、服飾の魔法やスキルはないのだろうか。





 あったら、全力で習得しよう。





 例え、悪魔と契約してでも。





 神宮は心に決意した。








 そんな神宮の薄汚れた妄想は露知らず、サリアは詠那や鳳来のリボンやスカートの裾を嬉しそうにいじっていた。











「頑張れよ!」



 ファリプ、ガ―ディス、タージェンに見送られながら、神宮達はサルバを後にした。





「最初捕まった時はどうなるかと思ったけど、良い人達だったわね」


「うん、鳳来とも合流することが出来たし」


「あとは時子と梨々花かぁ」


「時子は他者を利用して上手い事やってそうだが、梨々花が心配だな」


「た、他者を利用!? どんな方なんでしょうか」


「大丈夫よ、サリア。取って食われたりしないから」


「そうですね、詠那達のお友達が悪い人な訳ありません」





 晴れ渡る青い空の下、神宮一行はサルバの街に少し大きくなった背中を向け、首都アルテナを目指して歩き出した。















 アルテナ城。



「イシュー様!」



 イシューのもとに、兵士が慌てた様子で駆けてきた。



「どうした?」


「黒い月の頭領の首が、消えました……」


「消えた?」


「はい……きれいさっぱり、一滴の血液も残さずに……」



 イシューは、少し考えた。



「すぐにナナハを呼べ」


「はっ!」



 イシューは、神宮とミトロンの戦いを思い出していた。





「やはり……何かが起ころうとしているのか」

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