対ミトロン戦





「来なよ、真咲ベイビー」



 ミトロンは、指先を神宮に向けてクルクル回した。



 神宮は、ガーディヴァインを構えて突進した。


 神宮の刃は、ことごとく弾き返された。


 森の中に、鋭い金属音が木霊する。



「もっと打ち込んでごらん、ほら」


「くそぉ!」



 いくら神宮が斬りかかろうと、赤い刃はミトロンに届かない。










 君の力は、そんなものじゃないだろ?









 突然、神宮の剣の刃が、炎のような形に変形した。


 神宮はその炎の剣でミトロンに斬りかかる。



 ミトロンは長剣で受け止めるが、剣と剣が接触した瞬間、激しい爆発が起こり、ミトロンの長剣は粉砕した。





 神宮は、不思議な感覚に包まれていた。




 なんか今日、いけそうな気がする。




 神宮の剣は、今度はビームサーベルのように真っ直ぐな刃に形を変えた。



 

 そのまま、鋭い刃をミトロンの首元に向かって斬り上げた。

 









 詠那達がアジトのい入り口に駆け付けたと同時に、神宮の赤い刃がミトロンの首を飛ばした。



「神宮……?」




 ミトロンの首が地面に落ちる。


 神宮は、剣を構えたまま動かない。


 静寂が、辺りを包む。




 神宮のガーデヴァインが、通常の刃に戻ったと同時に、神宮は詠那の方を見た。



「あれ、みんな無事なの?」


「ってか神宮、あいつを倒したの?」


「へ?」



 神宮はきょとんとしていた。












「なんだよあいつ、あの剣見たか?」



 木の陰から気配を消して神宮とミトロンのタイマンを見ていたアルガスは興奮していた。



「早速あいつと勝負してくる!」



 アルガスは飛び出して神宮の下に駆けて行った。



「ナナハ、あの少年、どう思う?」



 イシューがナナハに質問する。



「不可解です。戦闘の時だけ、恐ろしいほどのオーラとスピードでした。そしてあの魔法剣。しかし、今見てみるとミジンコほどのオーラしか感じられません」


「ふむ……イヅナ様が我々を寄越したのは、この為なのか」








「よっしゃあああああ、勝負だ! おらぁ!」


「え!? ぐはっ!」



 神宮は、突然斬りかかって来たアルガスの大剣をもろに食らって白目をむいて失神した。



「盗賊の生き残りか!」



 詠那達は瞬時に戦闘モードになり、各々アルガスに向けて攻撃を放った。



「え、なんだよお前ら! うおぉ?」



 敵と勘違いされたアルガスは、聞く耳持たない詠那たちによってボコボコにされた。











 ガ―ディスは、ナナハの回復魔法によって一命を取りとめた。



 その後、すでに黒い月は壊滅状態であったが、1000人の兵によって1人残らず捕えられ、黒い月は殲滅させられた。




 第5帝国騎士団とアルテナの兵士達は、ミトロンの首を持ってアルテナへ帰還した。







「そのガキに伝えといてくれよ、今度は本気で勝負しようってな」



 アルガスはそう詠那に言って、なんだか嬉しそうに帰っていった。




 神宮は、サルバの砦の一室で眠っていた。


 力を使い過ぎたせいか、暫くは目を覚まさなかった。



 詠那は、神宮のそばに座って神宮の寝顔を見ていた。


 砦の外は、帝国騎士団とアルテナの兵の見送りで騒がしかった。




「かっこよかったわよ」



 そう言って、詠那は神宮の頬にキスをした。



「ちょっとだけね」



 詠那は立ち上がると、神宮が眠る部屋を出て行った。







「ぐへへへへ、こんなところでダメだよ、お姉さん」




 神宮は、年上の女子大生に夜の公園で誘われるという夢を見ていた。





 神宮が、詠那のキスに気づくことはなかった。


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