朝帰り
詠那達をさらった馬車が残っていたので、それに乗ってトリルの街の宿屋まで帰って行った。
詠那とサリアが手探りの状態で謎の動物(サリアによればカポというらしい)の手綱を握り、神宮と鳳来は荷台で寝ていた。
時子似は、膝を抱いて黙っていた。
トリルに着く頃には、空が白んできていた。
朝の澄んだ空気は、身体に溜まった疲れを洗い流して新たに生気を注いでくれる気がした。
「騎士の皆さま、助けて頂き、ありがとうございました」
時子似は、丁寧にお辞儀した。
頭に布を巻き、顔を隠している。
「では、私はここで失礼します」
「そんなぁ、あなたも寝てないじゃない。ここで休んで行きなよ」
宿屋のオヤジの邸宅を、自分に家のように振る舞う詠那。
しかし時子似はすぐに旅立つと言う。
「1つ、お願いがあるのですが」
「なぁに?」
時子似は、眼鏡を外して折りたたんだ。
「もし時子さんにお会いすることが出来たら、これをお渡し頂けますか? 時子さんにお借りしたものなので」
詠那は、時子の眼鏡を受け取った。
やっぱり、これは時子の眼鏡に間違いない、よく目にしていた時子の眼鏡。
「うん、わかったよ。ひとりで大丈夫?」
「はい。気にかけて頂き、ありがとうございます。では、私はこれで」
「うん、バイバイ」
皆で手を振り、時子似を見送った。
その後、倒れ込むようにしてオヤジの邸宅で眠った。
4人、川の字になり、ぐっすり眠った。
その姿は、部活の合宿で疲れて眠る少年少女たちそのままのようであった。
神宮の、スキンヘッドと顔に書かれたラクガキ以外は。
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