やっぱり詠那は制服が良く似合う





 神宮は、ガ―ディスが持ってた高級回復薬のエリクサーでなんとか一命を取りとめた。



 その後、詠那を訓練施設から救出すると、黒い月から突き付けられた取引の現状を神宮と詠那に伝えた。



「早くヒナとサリアを助けに行きましょう!」



 詠那はその話しを聞くすぐ、走り出さんとするばかりだった。



「これは完全に俺の独断で動いている。黒い月の討伐作戦は、首都アルテナを巻き込んでの大袈裟なものになってしまった。下手な事をすると、罰せられるかもしれん。それでもいいのか?」


「そんなこと言ってられないでしょ! 敵のアジトを教えて。神宮、行くわよ」


「は、はい……」



 神宮は、必死に訓練施設をクリアしたかと思うと詠那に瀕死の重傷を負わされ、またすぐに回復させられて今度は盗賊討伐と、目まぐるしく変わる状況に憔悴していた。

 しかし、鳳来とサリアの事はほっとけない。



 ガ―ディスは、神宮達の持ち物と装備(学校の制服等)を持ってきてくれた。



「ありがとう、ガ―ディス。神宮、覗いたら殺すわよ」


「わ、わかってるよ」



 もう、岩の巨人のキツイ1撃は懲り懲りである。

 詠那が木の影で制服に着替えてる間、神宮は反対側を向いて自らの手で顔を覆っていた。



 制服に着替えると、なんだか落ち着く気がする。


 安曇野は制服が良く似合うな、と神宮は思った。



 よし、と気分を入れ替え、3人はダリの森に向かった。











 首都アルテナ。


 城壁に囲まれた巨大な円形の城下町を中心として、東西南北にそれぞれに細長く高い壁に囲まれた街が伸び、その先端には細い塔が建っている。


 その円系の城下町の中心に、スカイツリーを太くしたような塔がそびえたつ。


 それが、この国を司る女帝イヅナが鎮座するアルテナ城である。




 イヅナは、最上階にある玉座の間で、サルバの領主ファリプから送られてきたヴィジョンで、援軍要請の内容を聞いていた。



「これしきのことで援軍を求めるとは、情けない限りですな。地方の小さな盗賊ですから、300人くらいでいきましょうか」



 ウサギの耳と鼻を持った、小柄な獣人族の老人が言った。

 どうやら、ポジション的に大臣のようである。


 イヅナは、ファリプからの書状をじっと見つめている。

 何も言わず、口を一文字に結んでいる。



「では、それでよろしいですな。それでは次の――」


「1000人です。それと、第5帝国騎士団も出しましょう」



 イヅナが、突然口を開いた。



「は?」


「聞こえなかったですか、バビーよ」


「いえ、しかしこの程度の盗賊達に帝国騎士団まで出すというのは……。本来ならファリプが領内で片付けなければならない問題ですし」


「黒い月というのは、最近急成長してる輩でしょう。そういった脅威は、他にも存在します。ここで完膚なきまでに叩き潰し、見せしめにするのです」



 高い玉座から見下ろすイヅナの有無を言わせない視線に、バビーは反論する術を持たなかった。



「かしこまりました」


「それと」


「はぁ」


「拘束されている少女2人は必ず生きたまま救出しなさい」


「承知しました。では次の――」



 イヅナは、その全てが見下ろせる玉座から、遥か彼方、山の向こうを望んでいた。



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