あ、硬くなってる






詠那は、それがごく当たり前の行為であるかのように、神宮のズボンのベルトを外していく。



この時すでに、神宮のそれは熟れきった果実のように、触れればはち切れんばかりであった。


100%中の100%である。




詠那はゆっくりと神宮のチャックを下ろすと、上目遣いで神宮を見て、意地悪そうに微笑んだ。



「もう、こんなになってんじゃん」



そして、地面からひょっこり顔を出したモグラのようにチャックから覗く白い膨らみを、詠那は小さな人差し指の先でちょんと触れた。



「あ、硬くなってる」



「はうおぅあぁぁあ!」



詠那が触れた瞬間、それがトリガーとなり、巨大化した戦艦から強力な波動砲が放たれた。



反り返った砲身は、ちょうど白い布の隙間からニョキっとその船体ごと大空へ飛び出し、凄まじい威力で放たれた波動砲は神宮の顔に直撃した。



セルフ顔射である。




「きゃあ、ちょっとなにしてんのよ!?」



神宮は自分の顔についた液体を手で拭うと、その手の平に付着した白いものを見つめた。



「最低だ、俺って……。でも、大丈夫だよ」



そう言うと、神宮はおもむろに懐からウネウネとモーター音を響かせて動く棒状のモノを取り出した。



「ぎゃああああ、なによそれ! 」



神宮は構わず、ウネウネと動くモノを持って詠那に近づく。



「ちょっと、そのドンキの18禁コーナーに置いてありそうな卑猥な物体早くしまってよ!」


「いいじゃないか、僕のヘビーモスが復活するまでこれで攻めてあげるよ。それとも、こっちのタイプの方がいいかい? ぐへへへへ」



「こ、こっちくんなヘンタイ!」



神宮が更に懐から大人の玩具を繰り出そうとした瞬間、詠那は近くに置いてあった跳び箱の1段目を取り外し、それを思いっきり神宮の顔にスイングした。



「ぐぼぁっ!」


激しい衝撃と共に、目の前が暗くなった。












「ダメじゃないか、もっと我慢しなきゃ」



神宮が目を覚ますと、そこは体育倉庫ではなく、電車の中だった。


目の前には、神宮真咲を名乗る者が対面で座っている。



「あれ、さっきのAVのようなのは、夢?」



神宮は、ボーっとする頭のままで言った。目の前の神宮真咲を名乗る者が答える。



「夢とは、少し違うね。僕が作り出したもう一つの現実だよ」


「もう一つの現実……」


「そう、君がいた現実と何ら遜色のない現実だよ。僕なら、そのもう一つの現実を自由自在に操る事が出来る」


「自由自在に」


「そう、生意気な詠那や冷たい鳳来、ロリのサリアを思う存分自分の好きなように出来るんだよ」



神宮真咲は大きな音を立てて唾を飲み込んだ。



「しかも、この世界では現実世界のように歳を取る事もない。永遠に、好きな時間を好きだけ生きられるんだ。素晴らしいと思わないかい?」


「素晴らしい……」


「現実世界のように、勉強や人間関係で悩む事もない。自分の出来の悪さに、落ち込む事もない。何の悩みもないんだ。全ては自分の思い通りになる。その中で永遠に生きられるんだ。これ以上、最高な事ってないだろ?」


「うん、そうだね……どうすればいいの?」


「カンタンだよ」



目の前にいる神宮真咲を名乗る人物は、ニヤリと笑った。



「君の顔を、僕にくれればいいんだよ」


「僕の、顔を……?」




こ、こんなブサイクな顔を欲しがる人がいるのか……





神宮は、自分の右頬に手を当てた。






僕の顔、どんなだったか、思い出せない--




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