変態に至る病、そして




ここは、どこだろう。




神宮は、赤い電車に乗っている。


長いベンチシートの真ん中に腰かけ、車両のちょうど中央辺りに座っている。


車窓からは、黄昏時なのだろうか、オレンジ色の光が窓から溢れている。そのせいか、外の景色はよく分からない。


周りを見回すと、乗客は神宮以外見当たらない。


ガランとした車両の中にガタンガタンと走行音だけが一定のリズムで鳴り響く。




あ……違う、居る。




確かに、神宮の前に1人、ブレザーの制服を来た高校生らしき男性が座っている。


その男は、何故か顔の部分が墨で塗りつぶされたように暗くなっていて、どんな顔をしているのか見る事が出来ない。


しかし、神宮には分かる。



あれは、僕だ。




顔がはっきりと見ることが出来ないのに、何故かわかる。



でも、あれ?



僕ってどんな顔してたっけ……











「ショックウェーブパルサー!」



除念士の唱えた呪文で、空間が歪むほどの激しい爆発が幾重にも巻き起こる。


しかし、黒い顔には全く効いていない様子だ。


何事もなかったかのように、床に広がった影の上に、不気味に浮かんでこちらを睨んでいる。



「効かぬか……」


「神宮を返しなさい! この顔だけ星人」



そう叫んで、詠那は除念士を振り払って前に出た。



「これ、イカン!」



その瞬間、詠那の足元に黒い影が伸び、その影の中から真っ黒な手が飛び出して来た。



「あ--」



詠那が叫び声を上げる隙さえ与えず、黒い手は詠那の足元を掴もうとした。


しかし、それより速く、鳳来が詠那の身体を抱えて飛び去った。


黒い手は、詠那の脚を掴み損ねて再び黒い影の中に消えた。



「詠那、冷静になれ」


「ごめん……、ありがとう」



鳳来の腕に捕まりうなだれる詠那。


それを見て、サリアはそっと、巨大な弧を描く大鎌を取り出した。










「君は、誰?」


『誰って、僕は僕だよ。僕は、神宮真咲』


「そんな、神宮真咲は僕だ。僕は僕。僕は1人だ」



向かいの席に座る神宮真咲を名乗る者が、少し笑ったように感じた。



『べつに、僕が2人いてもいいじゃないか』


「よくないよ」


『全然いいじゃん。例えばさ、僕が君の代わりに学校に登校して、君は家で無料動画を観てる。僕が2人いれば、そんな事が出来るんだよ』


「そ、それはなんて素晴らしい……」


『例えば、プールの授業の時、僕が授業に参加していれば、君はスクール水着の女子を覗いたり、はたまた着替えの教室に忍び込んで脱ぎたての制服や下着の匂いを思う存分嗅ぐ事も出来る』


「それは……」



神宮は、ゴクリと唾を飲んだ。



『そして、こんなことも可能だよ--』









「なにボーっとしてんのよ」


「え?」



書き慣れた声で、目を覚ました。


頭がボーっとして、上手く現状を理解出来ない。


手に触れた、固い布の感触。


これは、マットだ。

よく、体育の授業で使う白いマット。その上に僕は座っている。


閉塞した空間特有の少しカビ臭い、淀んだ空気の匂いがする。


周りを見回すと、丸い鉄の柵に入れられたバスケットボール、茶色い跳び箱、ここは--



体育館の倉庫?




「ちょっと、真咲」



聞き慣れた声に呼ばれ、ハッとする。


そこにいたのは、安曇野詠那だった。


ブレザーの制服を身に纏い、壁にもたれ、神宮と同じく白いマットの上に両足の膝を立てて座っている。


そして、その健康的で張りのある太ももの間には、



「はうあっ!」



全く隠す素振りも見せず、白いパンツを露わにしている。


目を凝らせば、縦のスジが見えそうなほどに、それはすぐそばにあった。


まるで、僕に見てくれと言わんばかりだ。



神宮のmy sonは、チャックを突き破らんばかりに膨張した。



「なにしてんのよ、時間なくなっちゃうでしょ。早くしよ」



そう言って、詠那はブレザーを脱ぎ、四つん這いの姿勢で近づき、神宮のズボンのベルトに手をかけた。




な、なんなんだ、このJKモノAVのような状況は--


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