光が灯っている間に





「魔法が使えないって、どういうこと!?」



 完全に詠那の魔法を頼りにしていた神宮は絶望した。



「あたし今光魔法使ってるでしょ? 一度に2種類の魔法を使えるほどの魔力がまだないの」



 詠那は光魔法のライトを使ってまわりを照らしている。

 他の魔法を使う場合は、光魔法の使用を中断しなければならない。

 そうすると、また闇の世界に逆戻りだ。



「じゃぁ、どうすればいいんだ……」



 神宮は地面に手をついてへたれ込んだ。

 そこに、詠那の蹴りが神宮の尻にヒットする。



「はうぁ!」


「なんの為にその剣持ってんのよ、戦いなさい!」



 続いて詠那の蹴りが2、3撃神宮にヒットする。

 その度に神宮は嬉しそうな悲鳴を上げた。


 神宮は詠那に蹴り出され、デカスライムの前に立ちはだかった。

 神宮の持つガーディヴァインの白い刃がキラリと光る。



「うーん」



 大きなスライムの顔が、ニヤリと嘲笑っているかのように見える。



「こういう場合は、どうするんだっけ」



 神宮は、今までプレイしたゲームの内容を思い出していた。



「こんなんに物理攻撃が効くのかなぁ……」


「ブツブツ言ってないで攻撃!」


「は、はい!」



 後ろで構えている詠那に叱責され、恐る恐るスライムを斬りつける。

 刃は、水の中を通したように全く手ごたえがない。

 そしてスライムの反撃がくる。

 神宮はへっぴり腰でなんとかかわす。



「やっぱり物理攻撃じゃダメみたいだ。それなら……」



 神宮はアイテム袋から火の魔石を取り出し、魔具にセットした。



「ファイアーボール!」



 ガーネットの訓練で教えてもらった、炎の魔法だ。

 神宮の手から炎の球が飛び出し、スライムに直撃する。

 しかし、ダメージを与えた印象はない。



「魔法もダメ?」



 そしてまたカウンター。

 神宮は詠那のもとに走って逃げる。





「安曇野、物理も魔法も食らわないよぉ」



 神宮は泣きそうな表情で詠那の胸にすがりついた。



「なに触ってんのよ!」


 詠那の蹴りがさく裂。神宮に30のダメージ。

 神宮は地面にうつぶせで倒れ込んだ。



「あんた、こういうの得意なんでしょ? どうにかしなさいよ」



 そう言う詠那は、強気な言葉に反して少し苦しそうな表情をしていた。



「安曇野、大丈夫?」


「……光魔法を使い続けるの、けっこうキツイのよ。なるべく早くお願い」



 ライトで部屋中を照らしている間、ずっと詠那の魔力は消費し続ける。

 神宮はそれを忘れていた。自分で自分が情けなくなった。



 神宮は立ち上がった。



「安曇野、安全なところで座ってて」



 神宮は剣を再び剣を構え、スライムの前に走っていった。


 神宮はスライムを観察した。




「こいつは、自分からは攻撃してこない」



 スライムは不敵な笑みを浮かべているだけで、動かない。



「こういうダメージを与えられないモンスターの場合、特別な倒し方がある場合が多い。例えば、本体や弱点が別にいるとか……。この恐そうな顔も、カモフラージュかもしれない」


 神宮は部屋の中を見渡す。

 壁や天井。

 しかし、怪しい所はない。

 またスライムの観察に戻る。


 すると、スライムのプールに沈んでいる、大きな黒い芋虫を発見した。



「あの芋虫が本体、な訳ないか。でも他にそれらしいものがないんだよな」



 その時、洞窟内が薄暗くなった。

 詠那の魔力が、弱っているのだ。

 時間がない。



 次に暗闇に飲まれたら、もうなすすべがない。






 神宮は、先の、落下して死を覚悟した時、痛いほど思い知った。




 このままくたばってしまったのでは、必ず後悔する。






 僕は……、

 


 詠那とサリアと鳳来の身体にしゃぶりつくまでは……、



 なにがあっても死ねない!!!





 神宮の身体が、金色のオーラに包まれた。




「神宮……」


 詠那は、金色のオーラに包まれる神宮を見て感心していたが、このエネルギーがエロから発せられるものだとは、知る由もなかった。



 神宮の生命活動は、エロエネルギーによってのみ維持されていると言っても過言ではないだろう。


 神宮の身体に力がみなぎる。





 そして、神宮は大きく剣を振りかざし、スライムのプールに飛び込んだ。



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