新たなる、境地
「すごい……」
神宮の目の前で、詠那、鳳来、サリアの3人は、まるで悪い魔女によって夢の世界に囚われてしまったかのように、深い眠りについている。
「本当に効くんだ……」
食事を終えるとほぼ同時に、それぞれ倒れるように眠りについた。
食器などもそのままで眠ってしまった為に、神宮が1人で後片付けをした。
日は落ち、部屋の中を照らすのは青白い月明りばかりである。
どうやら、神宮が飲んだスープは睡眠薬入りではなかったようだ。
この時ばかりは、神も味方をしたようだ。
「ホントにぐっすり眠ってるよ」
床に寝そべり、無防備な表情で寝息をたてる詠那。
真咲はそっと顔を近づけ、耳を甘噛みする。
「うん……」
詠那は甘い吐息を漏らす。
次に、神宮は音を立てないように、壁を這い寄るGのようにコソコソと、鳳来のそばに移動する。
いつもは冷静で強気な表情を崩さない鳳来だが、寝ている時はまだ子供のJKそのものだ。
神宮はそっと、右手の人差指を鳳来の口に挿入する。
鳳来は、パクッと神宮の指を咥えて、舌で指の先を弄ぶ。
「はうあっ!」
神宮は思わずベルトを外し、制服のズボンを下ろす。
その時、鳳来が寝返りを打った。
驚き、神宮はズボンを下ろしたまま後ろへ跳躍した。
はぁ、はぁ、いけない……
今ここで起こしちゃったら、僕の顔は修羅のままだ。
顔が元に戻ったら、あの変態を逮捕し、その後でこの睡眠薬を使って思う存分楽しもう。
神宮は、またコソコソと3人のもとへ近づき、詠那、鳳来の制服のスカート、サリアのワンピースの裾を捲った。
詠那は白地にクマさんがプリントされたパンツ、鳳来は黒くセクシーな下着、サリアは間違いのない縞パンだ。
神宮は、暫くその光景を眺める。
今日は、皆お風呂に入っていない。
3人の下着は、若い娘のエキスがしみ込んだ、あの変態お好みの状態になっているだろう。
あとは、パンツを脱がし、道具袋から代わりの下着を取り出してそれを履かせれば、それでこのミッションは終わる。
神宮は、下着を露わにしている3人を眺める。
建物の外からは、虫の音と、獣の雄たけびが遠くから聞こえる。
本当に、これでいいのだろうか……
安曇野、鳳来、サリアは僕のものだ。
下着についた染みでさえ、あの変態には触れさせたくない。
一滴残らず……、僕のものだ。
神宮は、立ち上がると、ズボンを上げ、静かに建物から姿を消した。
翌日、神宮達は徐念士の洞窟を訪れた。
詠那達は、寝すぎて逆に体調が悪い、とダルそうにしている。
よほど強い睡眠薬なのだろう。
この睡眠薬を使って、あの変態はどれほどの犯罪に手を染めてきたのだろう?
あの洞窟の奥には隠し部屋があり、女性ものの下着や制服などが山のように積まれているのではないだろうか。
「真咲さん、目の下に隈が出来てますけど、昨日は眠れなかったんですか?」
不安げな表情で、サリアが言う。
「ありがとう、大丈夫だよ。みんなは、ここで待ってて」
「うん。頑張れ」
詠那はあくびをしなが親指を立てて神宮に向けた。
神宮は、何も言わずに頷く。
「入ります」
神宮は几帳を捲り、洞窟の中に入る。
洞窟の中は、昨日とは一変していた。
床に敷かれていたカーペットは剥がされ、地面に大きな魔法陣が描かれていた。
除念士は、その魔法陣の中央に座っている。
除念士の後ろには祭壇があり、その上には何かの獣のものだろうか、角が生えた頭蓋骨が置かれている。
除念士は、ゆっくりと目を開けた。
「約束のものは、持ってきたか?」
「はい……」
神宮は、紙袋の中から、女性ものの下着を取り出した。
赤、青、白それぞれ色違いのパンツである。
しっかりと、条件であった染みも付いている。
神宮は、それを除念士に手渡した。
「おおお、素晴らしい!」
除念士は3つのパンツを交互に鼻に押し当て、匂いを味わう。
「う~ん、マンダム!」
変態は、むさぼるようにパンツを愛でる。
神宮は、なにも言わずに、その光景を見ていた。
神宮は、詠那たちのパンツを獲らなかった。
昨夜、こっそり部屋を出ると、急いで下山し、トリルの村に向かった。
そして、もう深夜でクローズしている洋服屋に行き、無理やり店を開けてもらうと、女性ものの下着を3枚購入した。
すると、購入した下着を穿き、走ってまた山を登った。
山登りは激しい運動になるので、下着に染みやにおいがつく。
神宮は下着を穿き替えつつ登山をし、3枚の下着に均等に染みを付けた。
そして、明け方、ショルクの村に着くと、下着を脱ぎ、紙袋に収めると、何事もなかったかのように眠りについた。
そう、変態が愛でている染みと匂いの主は、神宮なのである。
変態のおっさんが、自分の匂いで興奮している。
リアル世界で、自分のパンツを売る女性が存在すると聞くが、彼女らはこういう心境になるのだろうか。
神宮は、窺い知らぬ未知の境地を垣間見た気がした。
変態は、一通り堪能すると、下着を懐に入れた。
そして、急にオーラが変わった。
「では、お前の呪いを解いてやろう」
そこにいるのは、先ほどまでの変態ではなかった。
鋭い瞳は、様々な怨念と闘ってきた除念士のそれである。
「お前にかけられた呪いは、暗く、深く、まるで底なし沼のように底が知れない。厳しい戦いになるだろう。覚悟はいいか?」
神宮は、拳をぎゅっと握った。
「はい……お願いします!」
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