エロは別腹





 後半戦も、某クリフハンガーのような一般高校生に無理ゲーなポイントはなかったが、重量挙げ、高速で動く床など、ハードなものが殆どだった。



「ううん、キツい……でも、負けてらんないのよ!」



 詠那は最後の難関、絶壁ナンバー2を登り切り、全ての工程を終えた。



「ついたー!」



 さすがの詠那も疲れて、仰向けで大の字になって寝転んだ。



「疲れたぁ、シャワー浴びたい」



 遅れること30分、神宮は絶壁ナンバー2の前に立っていた。

 疲労物質が限界にまで溜まった神宮の身体は、立っているのもやっとだった。

 しかし、神宮も男である。

 半ば意地になっていた。

 絶対上り切ってやる。

 でも、さっきの動く床で全力疾走したから、口の中がカラカラだった。



「安曇野、そこにはお水ないの?」


「なーい」



 ないのか。

 少しでも水で身体を潤せば、パワーも違ってくるはずだ。

 神宮はひらめいた。


 そうだ、水の魔石がある!


 神宮は水の魔石をセットし、呪文を唱えた。



「ウォーター!」


「ちょっと、何やってんのよ!」



 神宮が呪文を唱えた瞬間、天井にぶら下がっていた巨大コウモリがタックルしてきて、神宮は3メートル下に落下した。



「あいたー」



 落下した神宮は、またスタートからやり直しである。



「しまったぁ」


「もう、バカじゃないの」



 そう言って、詠那も降りてきた。



「え、安曇野なんで?」


「これくらいじゃ、物足りないの。もう一周してくる」


「安曇野……」


「さぁ、行くわよ!」


「う、うん!」



 結局、数時間でクリアー出来る第2階層も、1日かかってしまった。

 しかし、神宮と詠那は格段にレベルアップしていた。






「今日は良い運動したわね。第2階層にもベッドはあるのかしら」


「あ、あるといいね!」



 神宮にとって身体の疲労とエロは別腹である。

 ベッドと聞いてすぐに瞳が輝きを取り戻した。


 詠那は、ゴールである扉を開けた。

 次の部屋は長細い空間になっており、その奥には、馬の顔に人間の身体を持つ、モンスターが立ちはだかっていた。

 大きな手には、立派な斧を携えている。



「あ……ボスの事忘れてた」



 詠那は、何事もなかったように扉を閉じた。



「ちょっと休憩!」


「さ、賛成……」



 2人は、扉にもたれたままそこに座り込んだ。

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