燃え上がる神宮の心





 神宮の目の前で、ガ―ディスが入っている箱が、燃えている。



 神宮はもがくが、身体を完全に押さえつけられ、動けない。


 神宮の視界が、涙で歪む。


 燃える箱。


 その奥でも、何かが燃えている。


 だが良く見えない。顔を左右に振って、涙を振るい落とす。



 あれ、なんでだろう、盗賊が、燃えている……?




「う、うわぁぁぁぁぁ」



 その悲鳴と共に、神宮の身体が軽くなった。



「まったく、頼りないんだから。バカ真咲」



 神宮の目の前には、見覚えのあるスニーカー。


 そのスニーカーから細い伸びる脚は、ひらひらしたスカートの中に消えていた。



 そこにいたのは、詠那だった。



「あ、安曇野?」


「ほら、早く起きて。ガ―ディスを助けなきゃ。ウォーター!」



 詠那のウォーターの呪文で、ガ―ディスが入っている箱は消化した。


 他の盗賊達は、皆燃えていた。


 神宮達は、急いで箱を開けた。



「ガ―ディスさん!」


「おぉ、すまない」



 ガ―ディスは、火傷はなかったが、槍で疲れた左肩を負傷していた。



「ウォーター!」



 詠那は、燃えている盗賊達も消化した。


 皆、気を失っていたが、副団長だけは意識があった。


 微かに髪の毛が残っていた禿げ頭は、焼け野原のように無残な有様にだった。



「お、お前ら覚えていろよ……」


「安心しろ、帰って風呂に入ったら、お前の事など誰も覚えていない。神宮、詠那の目を塞いでいろ」


「う、うん」


「ちょっと」



 神宮は両手で詠那の目を覆った。


 そして、ガ―ディスは長剣で副団長の首を切り落とした。



「さぁ、鳳来とサリアを探しにいくぞ」



 部屋を出て行く3人。


 ボコボコにされたタージェンの存在は、完璧に忘れ去られていた。








 ガ―ディスは、やっぱり強かった。



 訓練して強くなった神宮と詠那も盗賊を倒すことが出来たが、左肩を負傷している手負いのガ―ディスにさえ2人掛かりでも勝てないと思った。



 盗賊共を次々と倒し、どんどんと洞穴のようなアジトの奥に進んでいく。






 そして、1番奥の部屋の扉を勢いよく開けると、3人は目を疑った。




 中央の椅子に座るキラキラした金髪イケメン。


 そして、その両サイドに立つ、ゴスロリ姿のサリアとピンクのロリ服を着た鳳来。


  



 これは一体どういった状況なのだ?





 神宮は考えた。



 そうか、わかったぞ。



 あのイケメンの持つ立派なベヒーモスと饒舌テクによって虜にされてしまった2人は、調教されて奴の言いなりになった。



 そして、奴の変態的な趣味によってあんな魅力的な素晴らしいコスプレで毎晩プレイを楽しんでいるというわけか。





 なんという羨ましい。



 そして、許せない!




 良い所を持ってくのはいつもイケメンだ。



 そして僕みたいなのはいつも苦水を飲まされる。




 この世の不条理は、異世界でも同じということか。



 そんなの許せない。




 ならばそんなもの……、この僕が壊してやる!!!





 神宮の心は、イケメンに対する一方的な嫉妬の炎で激しく燃えていた。





 神宮の身体から黄金色のオーラが溢れ、神宮の持つガーディヴァインの刃が赤く輝き始めた。




「ほう、君が魔法剣の使い手の少年だね」




 ミトロンは、神宮の怒れる表情を見て舌なめずりをした。






 おいで、魔法剣の坊や。




 僕が味見してあげる。

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