刹那

　推しのweb作家さんの作品すべてが突如消えてしまう、その喪失感に苛まれても希望を見出す物語。 webでは跡形も残らない、その残酷さがまざまざと伝わってきます。作品たちは消えてなく…続きを読む

　穏やかな日常に春うららかな綻び。 優しい季節の訪れを伝え、暖かなの木漏れ日のように舞い降りる美しい言葉の連なりが印象的な本作。だんだん私を私たらしめる印象操作も面白く、視点のすり…続きを読む

　軽妙なテンポで披露される歌会。お酒のチカラも借りながら、楽しめる内容となっています。地の文が冒頭くらいで、あとは会話と心の声がメインの構成で本当に読みやすい。挑発的な殺し文句も軽…続きを読む

　乗っ取られた父親の施設の立て直しを図るため、転送装置の開発を進める主人公の陽日（はるひ）が片道切符のタイムリープに挑む物語。最も問題視された時間軸との整合性という課題が立ちはだか…続きを読む

　春を彩る花々に包まれる心地のよい物語です。 春の色は桜の桃色だけではなく、モクレンを代表する鮮やかな純然たる白と高貴の紫も色彩の豊かさを添える美しさとして映えます。 　また、清和…続きを読む

　春の時分に夏の風物を取り入れる粋な合わせ方が巧み。出会いの季節に肖りたい手早な感情を垂れ流して、美化された過去に縋るのだろうか。 ひと夏だけの短い命を、春を先取りして早々にして散…続きを読む

　事なきを得る幸運にどこまで縋り、頼ろうか。車なしでは生活できない田舎に祖父母と三人暮らしであろうか、結婚の意思もなく今年も巣立たないあたしがいる。わだかまる後ろめたさに罪悪感を紛…続きを読む

　性的マイノリティ要素を織り混ぜての夢追い人の同居生活。ふたりの目指す未来はそれぞれ違うけれど、この先どうなるんだろうという興味が尽きない。いくつもの偶然を結んだ矢先の急展開は多様…続きを読む

読めば読むほど味が出るホラー。謎めいた文章の先々で張り巡らされた伏線。一本の線でピンと張られた瞬間に、すべてが繋がる快感を覚える。弛緩した狂気たる部位を緊張した舌鼓でご賞味ください…続きを読む

今年も出会いと別れの季節がやってきた。大学入試後の失意の中での一期一会。ぼんやりと淡く光る桜の木の下にいたのは、迷子の姫だった。心を通わせ、彼女を助けるために立ち上がる気概が春の夜…続きを読む

春の花々が美しく咲き誇る風景、その中でも藤の花の描写がとても綺麗です。語りかけてくる花の言葉が風に揺れて、匂い立つ香りがふたりを誘う展開が興味深い。思い出の香りとしてふたりの心を熱…続きを読む

奇抜な発想に衝撃を受けます。春に咲いたおじさんは、喋ります。タバコ吸います。コーヒー飲みます。故にシュールであります。しかし、どこかユーモアを感じるのです。そして哀愁を帯びたセリフ…続きを読む

　この世の無情を伝える描写に紅の施し。 夜に妖艶な彩りとして浮かび上がる美しさを詩的な描写の中から感じます。 　桜の樹の下で穴を掘る、その深みに浴して浮かび上がる秘めたる意味とは。…続きを読む

　男と女の名前をもつ友人【小幡陽道】こと『エミ』。最初から女の子に生まれたかったと思って生きてきた彼は突然、自死してしまう。彼の死の前日まで一緒に遊んでいた仲の私だが、彼の死を受け…続きを読む

　生まれつき心臓の悪い私。心臓の働きがすぐれないから、心の言葉や気持ちの伝え方も、悪い方向へ動いたのかな。 　好きなのに、嫌いと言う。本当は欲しいのに、要らないと言う。天邪鬼のよう…続きを読む

　夢と希望を求めて、その身を捧げる女性たち。その心理につけ込んで、夢見として輝ける夜の世界、マネーアンダーグラウンド。行き先のない心の空白を埋めるように癒してもらおうと、求める先に…続きを読む

耳朶を打つ怪異めいた擬音。鼻腔をつく美醜の馨り。雪という正体不明な女の存在。想像力の空白たる余地を残すことで醸されるホラーが余韻を残す。春の描写にこれらのホラー要素が五感を狂わせる…続きを読む

　人の心はガラス細工のように脆く壊れやすい。本作ではその認識を拡張した失恋の『リハビリ』という実に絶妙なキーワードが登場します。まさに言い得て妙。途中で気になるお相手が見つかったら…続きを読む

二人きりの雨宿り。水分を従えた髪が、制服のシャツとが色めいて、子どもから大人へと向かう鼓動が駆け上がる。閉じられた瞳に思わず上気してしまう止まらない胸キュンが魅力。途切れそうな恋の…続きを読む

　二度と会えない人にもう一度会える―― その想いを胸に佐砂井の郷を目指す物語。約束の場所は地図にはない廃村。それだけでも十分ホラーを感じるのですが、この小説が素晴らしいのは生と死の…続きを読む

あおむしくんの声にならない気持ちが伝わってくるようです。幼いあおむしくんが、やがては立派なちょうちょへと成長を果たして孤高に飛んでいく姿。完全な無知の状態で知り得ていたら素敵だろう…続きを読む

　気づいた時には遅かった彼女との別れ。それを引き合いに出すかのように人違いで声をかけてきた一人の女性。別れと出会いの季節としての描写に、女性的な情緒を感じます。 　特に印象的だった…続きを読む

　冒頭部にまず惹き込まれます。不意に訪れる病から人生の転換期を迎えてしまう主人公の頼子。予兆なくして訪れた暗転がもたらした先に展開される新しい季節の来訪。まさに厳冬たる病を振り切る…続きを読む

　現代人の疲れた心と身体。舞い散る桜の花びらが泣いているという比喩に共感を覚えます。 作中のバラ配りの彼女との出会いは、偶然のようで必然であったように思える設定なのですが、彼女の言…続きを読む

　近未来SFの舞台装置に希望としての春を求めた儚くも情緒的なストーリーです。AIのチカラを借りても、人間が取り戻せない思い出と分かっていても、求めてしまう。人間の性を機械に託して埋…続きを読む

お互いを思い遣る心だと、あらためて思い至らしめる小説。忙殺され亡った心。呼び水として伝う感情の線が、ふたり愛を繋ぐ涙ぐましい物語。

　美男子と桜の相性が絶妙な心情で紡がれて心地よい読後感。彼の横顔に春が憩うような色彩美は、若菜君という名称を引き立てるような効果を与え興味深い。作中に登場する源氏物語の引用も物語に…続きを読む

　壮年期での中学校の同窓会。皆さんはどんな印象をお持ちですか？ 　本作では主人公の富士美が過去に思いを馳せ、一時のとある選択に揺れ動く物語です。ほろ苦く、切ない想いとしてドリップコ…続きを読む

故人への偲びを花見に重ねて、想いを温めるお話。桜が咲く。笑顔が咲く。今の瞬間を嬉々として、過去の周忌へ思いを馳せる。 流れゆく雲を感じるような、おおらかで美しい描写が映えて、過去か…続きを読む

　まず気を引かれるのは本作の意表を突くタイトル。一目するに春との接点に乏しい印象を受けます。 　しかし、ホラーへと駆り立てる想像力に対し、これらに抗う布石としての画鋲。次第に春とし…続きを読む

　色めく季節。新たな出会い。そんな時分に買ってもらったランドセル。これらの要素は一般にポジティブに捉える傾向にあります。 　しかし、本作ではこれらに抗うような心情を押し出し、敢えて…続きを読む

　まるで私たちの棲む世界を投影しているかのような美しい四季感と、その失いかけそうな危うさを内包した見事な描写力が秀逸です。 　これからの未来、急激な温暖化により雪を温かく感じる季節…続きを読む

　悲観的でどこか厭世的ともとれる心の冬。春めいていく麗らかさにさえ、どこか冷たさを感じる。 　目に見えない心中と、眼前に広がる世界との対比が巧みで、なんとも味わい深く、相反する心と…続きを読む

洗練された美しい春の表現。 和やかさに棲む滾る感情。 たおやかで奥ゆかしい文体。 花ひらく伊吹のように 生命力に満ちていく。 春の星とよばれる唯一の感性を ぜひ感じ取ってくださ…続きを読む

　小説を書いた経験のある方ならおそらく、誰もが共感できる作者様の経験談としての貴重な貴重な記録です。具体的な執筆ツールの紹介や自身の経験から詳細な数値を用いた分析に至るまで、目から…続きを読む

　夢に立ち尽くす白い影と交わした『約束』。それを果たすために、ある場所へと向かいます。 そこはかつて、隆盛を迎えた商店街。時代の趨勢とともに今ではさびれ果て、閑散としたシャッター通…続きを読む

　『月』をテーマにした作品。同性愛というツイスト設定も流れるような展開と、淀みや澱も少ないクリアな文体に心地よく読めるのが印象的です。 　この小説の優れている点は、タイトル文の意味…続きを読む

タイトルから何を想像されますか？ 黒歴史だから恥ずかしいモノ？　ヤバいモノ？　人には言えないモノ？ これには深い理由と感情が込められています。 恐怖・焦燥・諦観・後悔・そして、嫉…続きを読む

　作者様お得意のトリック小説。いま巷で噂の『アカサギ』が、別名『カメレオン』と揶揄され消えない影を落とす昨今。 　詐欺被害者たちは彼女の特徴を掴んでいるけれど、なぜか足跡が辿れない…続きを読む

　一言で言うなら大人の本能を艶めいた雰囲気で包み隠して心の内を探る小説です。 　引き合うような縁から離れていく遠に至るまで、二人の心情の変化がシガーのように儚く繊細で、美酒に肖るか…続きを読む

　黒歴史とは、かくも様々であり、誰にも言えない過去でもあります。しかし、作者様はそれを控えるどころか遺憾無く発揮され、闘争心さながらの卓越したほとばしる表現に、昇天しそうです。壮絶…続きを読む

　ここには、現代人の疲れた心を癒す、笑いの力が溢れています。その源は大阪のおかん。オモロくて、超絶明るくて、時々乙女で、そして愛すべき存在。作者様のキレッキレのツッコミが随所で光り…続きを読む

　自称読み専様のエッセイですが、ただのエッセイではありません。読み専様の心理・思考を手に取るように分かりやすくまとめ上げられ、カク側の創作意欲を刺激するだけでなく、読み専様の存在価…続きを読む

　夢かうつつか、その境目の無いリアルな夢に紡がれた一つの箱。そこから幻視のようにその中身が優しく開かれます。夏の風景が未来へと手招きするように、張られた糸が身を貫くほどに走り抜ける…続きを読む

　気が短く、クセの強い激昂エージェント五畳半悟。性格からして彼は営業に向いていない。しかし、こんな難物に対して物件を探している苦学生もまた難物だった。 目には目を。歯には歯を。難物…続きを読む

当時17歳。大人になれていなくて、やっぱり随分子供っぽくて、でも一途の想いがとても甘酸っぱい。この先の未来が繋がる場所を思うと、急に凄く切なくなる思いです。透明という言葉の意味が深…続きを読む

　こいつぁとんでもねぇ天使様だ！　そんな意識下の声が漏れてしまうほど毎回ブッ飛んだ振る舞いに、なぜか愛着が湧いてしまう天使リュリュエル。ここには想像を超えた面白さが秘められています…続きを読む

なんとも形容し難い奇怪な物語です。ある種の行き過ぎた嗜好に歯止めが効かなくなり、やがて常軌を逸してしまう展開に寒気を覚えます。 アブノーマルなプレイにはみなさん、くれぐれも注意しま…続きを読む

　トンデモ物件を見つけました。ハイ。でも中身はとってもハイテクなんですよ。作者様のセンスとアイデアが詰まった設備の数々とキャスト二人のコント調の掛け合いが堪りません。 　一度でいい…続きを読む

あなたは物件探しで内見の際、何を重要視しますか？　勿論それは人それぞれ。でも、彼女には特別な理由があったのです。サブタイトルの回収が個人的に好意的で家庭的な印象。何気ない普段の生活…続きを読む