私は文字を、絵として追う癖がある。
それは言葉通り、ビジュアルとして脳が処理しているという意味でもあるし、同時に再生される映像の世界を観ている、ともいえる。
積極的に文字を追わない。
勝手に浮かび上がってくる「文字たち」を拾う。
そんな風にして読むので、たまに抜け落ちてきて、
そんな風にして読むので、たまに違う絵までもが見えたりもする。
目を落としてすぐに、これは絵巻だと私の脳は捉え、そして私は、そのゆるやかな時の流れにするりとひきずりこまれた。
そう、恋をして、周りの風景がふっと時を止めてしまうかのように感じられるあの瞬間の、ヴェールに包まれた、護られた儚い美しさがそこにあり、
そして浮かんだ構図と風の流れは、おかざき真理さんの絵世界そのものでした。
詩でもなく、小説でもなく、絵のない絵巻を、文字(絵詞)で構成する世界。
これは、ははこさんならではの美しさと切なさだと思っています。
ありがとうございました。
那智風太郎プレゼンツ『桜猫企画』優秀作品 Best 6
やはり美しきものに異性も同性もないのだ。
桜の下で出会ったきみから、ぼくはいつのまにか視線を外せなくなってしまった。
そして花散らしの季節、きみへと寄せられてしまった僕の心はいったいどこへ舞い落ちれば良いというのだろう。
軽やかな散文によって的確に捉えられたぼくときみとの曖昧な距離感が素晴らしい。
また自身にも消化しきれない想いをぼんやりと不確定に表すことで、ぼくのもどかしさや切なさがしっかりと描き出されていて読む者に共感を与える。
なによりラスト、残りわずかになった桜の花びらを求めて歩く二人がどこか焦ったく、そしてウズウズとするような光景として目に映り、美しくも少しだけ我が事のように気恥ずかしく思えてしまった。
桜と猫に見守られるぼくときみ。
届きそうで届かない友情以上、BL未満の物語をどうぞ。