桜見るきみ、きみ見るぼく。酔えど語れど心、きみから離れがたきや

那智風太郎プレゼンツ『桜猫企画』優秀作品 Best 6

やはり美しきものに異性も同性もないのだ。
桜の下で出会ったきみから、ぼくはいつのまにか視線を外せなくなってしまった。
そして花散らしの季節、きみへと寄せられてしまった僕の心はいったいどこへ舞い落ちれば良いというのだろう。

軽やかな散文によって的確に捉えられたぼくときみとの曖昧な距離感が素晴らしい。
また自身にも消化しきれない想いをぼんやりと不確定に表すことで、ぼくのもどかしさや切なさがしっかりと描き出されていて読む者に共感を与える。
なによりラスト、残りわずかになった桜の花びらを求めて歩く二人がどこか焦ったく、そしてウズウズとするような光景として目に映り、美しくも少しだけ我が事のように気恥ずかしく思えてしまった。

桜と猫に見守られるぼくときみ。
届きそうで届かない友情以上、BL未満の物語をどうぞ。

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