概要
月夜の晩に、画鋲を拾う
あの春の夕方、表の庭で猫が鳴いていた。
夕飯の時間に祖父を起こしに行くと、ソファに背中を預け、眠っているように見えた彼の顔には、苦悶の表情が浮かんでいた。
※犀川よう様自主企画「さいかわ卯月賞」参加作品です。「優秀賞」「卯月特撰賞」をいただきました。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
夕飯の時間に祖父を起こしに行くと、ソファに背中を預け、眠っているように見えた彼の顔には、苦悶の表情が浮かんでいた。
※犀川よう様自主企画「さいかわ卯月賞」参加作品です。「優秀賞」「卯月特撰賞」をいただきました。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!春の魔除け
まず気を引かれるのは本作の意表を突くタイトル。一目するに春との接点に乏しい印象を受けます。
しかし、ホラーへと駆り立てる想像力に対し、これらに抗う布石としての画鋲。次第に春としての存在に近づいていく効果的な構成が自然発生的で目を見張ります。
死・生を夜の闇・朝の光とになぞらえ、眠りから覚醒へと向かう冒頭。春という時分の特徴に対する示唆・反映が技巧を凝らした美文で紡がれます。
春を厭わしく描写することでホラーを醸成し、撒菱に引き寄せるような見えない存在を絡めた筆致が見事です。
マイルドなタッチで春を怖気として演出するバランスが魅力。空想の産物が見通せない春の闇に棲まう、眠りがいざなう…続きを読む