身体が覚えているほろ苦い記憶

 壮年期での中学校の同窓会。皆さんはどんな印象をお持ちですか?
 本作では主人公の富士美が過去に思いを馳せ、一時のとある選択に揺れ動く物語です。ほろ苦く、切ない想いとしてドリップコーヒーがまるで口や舌に与える記憶として呼び覚ますよう。ところどころで示唆されるセリフに隠された言の葉たちが、散りばめられていて技巧的な印象を受けます。写真であったり、最後のオーダーであったり。
 読み手によって様々な意味合いとして取れる奥行きの深い構成、懐かしい気持ちになって読んでみてください。

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