カクヨムコン10、長編と短編W受賞の黒澤 主計 様。
コミカライズもされた短編が、こちらでございます。
(コミカライズもおもしろいです)
読みやすいミステリーに、キレのあるコメディの融合。
黒澤 主計ワールド全開のこの作品に、あなたは凍ったように立ち止まり釘付けとなることでしょう。
『雪女』の殺人。
目撃者たちは『雪女』のルール(雪女のことを話した者は殺される)のために、雪女のことを話せない。
でも、誰かには話させたい。秘密を抱えたままの人生は辛いのだから。
どう話させるのか。
そう、犯人に仕立て上げるのだ。それこそがババ抜きのババ。最後に持っていた者(犯人とされた者)は潔白のために『雪女』のことを話すしかない。
殺されると、しても。
偽の推理と本当の推理が交錯する中、ババを引くのは誰なのか。
その答えは、ぜひあなたの目で確かめてほしい。
雪に閉ざされた山荘といえば、言わずと知れた古典的ミステリーの舞台。本作はそこに「雪女」という伝奇的なモチーフを絡めたミステリー作品でありながら、コメディ作品でもあります。しかしながら、コメディ要素はミステリー要素と喧嘩することなく、うまく調和していて、筋立てとして本格ミステリーの醍醐味をしっかり堪能できる一編となっています。
起きてしまった密室殺人事件。ミステリーオタクと思われる山荘の管理人が事件を仕切り始め、犯人捜しが始まってしまいます。犯人は主人公グループにとって雪女と断定できる状況ですが、雪女のことをしゃべると自分の命はない。犯人と断定されるということは、やがて雪女の存在について触れざるを得なくなる。主人公グループ内での犯人の押し付け合いを「ババ抜き」にたとえた構図が見事でした。
登場人物たちも魅力的です。クレバーな主人公をはじめ、どこか憎めない印象の双子、ミステリー愛ゆえに事態をややこしくしてしまう山荘の管理人——それぞれのキャラクターがしっかりと立っていました。
そして迎える結末は、まさに想像の斜め上を行く衝撃の展開。ミステリーとしても、コメディとしても、短編ながら非常に満足度の高い作品でした。
素晴らしい読書体験を、ありがとうございました!
雪女とは、本来「畏れ」と「儚さ」の象徴。しかし本作に現れた彼女は、まさかの“アホ”。その予想外のギャップが、読者の常識と恐怖をひっくり返し、思わず笑いを誘う。しかしその笑いの奥には、しっかりと冷たい論理と不気味な余白が潜んでいます。
本作は、密室ミステリの構造美と都市伝説的な不安を軸に、「ババ抜き」というゲーム的構造を絡めながら、疑心と欺瞞が交錯する“現代の寓話”として描かれます。人は真実よりも安心を求める生き物──その弱さを突かれたとき、どこまで他者を信じられるのか。その問いが、ユーモアとサスペンスの中に静かに沈殿しています。
論理と狂騒がせめぎ合う“吹雪の山荘”の中で、失われていくのは真実か、それとも人間性か。最後の1行に辿り着いたとき、笑いの裏に凍りついた“何か”が、ひやりと心を掴んで離しません。
そして最後に──黒澤カヌレ先生。カクヨムコンテスト10、長編・短編でのW受賞、本当におめでとうございます。見事な二冠に、心からの拍手を。
物語は『雪女』がしかけた「密室殺人」のトリックに、不条理にも主人公が巻き込まれるところからはじまります。なぜ雪女はこんな不可解なシチュエーションを用意したのか――それがストーリーのカギを握ります、割とマジで。
『ミステリ』として真剣に推理を進めるキャラクターたちと、巻き込まれた主人公とのテンションの違いが笑いを誘います。しかし、物語が進むにつれ、主人公が双子の思惑に気づいたことで、物語は一転、『ババ抜き』というデスゲーム的緊張感を帯びます。
最大の魅力は、なんといっても「推理」の面白さ。謎を追求するさまが丁寧に描かれており、ミステリーとしての骨格がしっかりしています。
読者も主人公とともに、たのしい謎解きに挑戦できる一作です。
さすが受賞作!と読み終わったら膝を叩くこと間違いない!
散りばめられた伏線、さまざまな説が飛び交い、どれも正解のような気がしてくるが、最後の最後にきっと呆気に取られます。
雪山の山荘、集った若者の元に初めからいきなり現れる雪女。そして、自分を見たことを他言するなと言い含める。物語はここから始まる。
翌朝密室殺人が起きる。状況から犯人は雪女だと分かっているが、それを口にしたら雪女に殺されてしまう。
コイツが犯人だと追い詰めれば、そいつは自分の潔白を証明する為に雪女のことを口にするしかない。雪女の押し付け合いだ、ババ抜き雪女というタイトルの意味はここにあるのだ。
探偵気取りで事件を検証しようとする山荘の管理人。
犯人に仕立て上げられそうになり焦る主人公。
地の文で主人公が時々入れる突っ込みが殺人➕ホラー➕ミステリーというジャンルに色を与え面白みを増幅させてくれる。
ただで楽しく読める受賞作、コミカライズされるかもしれないけど、今のうちに原作を是非味わっておいてください!
吹雪の山荘に現われた雪女が、人を殺す現場を目撃してしまった主人公達。
雪女に遭遇したことを話せば、雪女に殺される。だから沈黙を貫くことにしたのに…。
殺人現場は密室になっており、ミステリー好きの管理人は意気揚々と犯人探しを始めてしまう!
しかも、現場は『吹雪の山荘』というクローズドサークルになっており、まさに「犯人はこの中にいる」という状態。
黙っていればやり過ごせるはずだったのに…。一緒に泊まっていた双子が急に主人公を犯人扱いし始める。
このまま黙っていれば、殺人犯にされてしまう! ババ抜きという名の壮絶なデスゲームが始まってしまった!
双子と主人公の疑念と推理の応酬、審判する管理人。
そして驚きの結末へ!
ぜひ、最後まで読んでください!