主人公、蛍《けい》は、トランスジェンダー。
女性の身体、心は男性。
かつ、愛したいのは、男性。
(つまり、身体は女性だけど、ゲイだって事)
運命の出会い、超美形男子、翔太郎は、男性しか愛せぬ男。(つまりゲイ)
この二人、何がネックになるか。
相思相愛となっても、蛍が女性の身体なのが、ネックになるのである。
翔太郎は、男性の身体にひかれ、女性の身体にはひかれないからである。
そして、そんな翔太郎を、蛍は理解できてしまうのである。
あ〜、複雑!
こじれてる!
でも純愛。お互い、相手を大切に思っているのに……。
ドタバタ・コメディであり、ロマンティックなラブの物語です。
『月』をテーマにした作品。同性愛というツイスト設定も流れるような展開と、淀みや澱も少ないクリアな文体に心地よく読めるのが印象的です。
この小説の優れている点は、タイトル文の意味を捉えながら物語の本質に辿り着けるだけでなく、それらを取り巻くテーマとしての『月』の精神世界とが、見事に融合している展開に尽きると思います。
性別を超えた純粋な愛と、肉体以上に繋がった精神の行方。
短い永遠を思わせる心魂の在り方と、対比されるコズミックで美しい月描写。
これらで結ばれるラストに、どこか幻想的で夢見心地のような思いが高鳴り、またその先を求めたくなる欲求がゆらりと騒ぎます。
そのゆらめきの中で、改めて気付かされました。
時を超えても、性を超えても、愛の本質は変わらないということを。
まず、主人公の設定からぶっとんでいますが、でも、まあ、そんなこともあるかもしれない。そして、彼女(彼)が「この人!」と決めた人も、「あ、ああ、そっちなんだ」。まあ、それは珍しくないかもね。えっ?その二人がまさかの……。
いや、現実的に外側だけ見れば、普通のカップル。でも……。
それで、月にお願いしたら、うさぎが出てきてさあ大変!
もう、面白い!先が読みたい、早く読みたい
とばかりに、駆け足どころか、全力疾走で読んでしまいました。時々息継ぎもしましょう。
心の声がダダ漏れになってしまいますよ(笑)。
最後はどうもっていくんだろう??
と、読者はハラハラ。でも……。
ジェットコースターだけれど、筆者様の筆力で、文章も淀みなく、読みやすいのが心地いいです。
心とは?精神とは?魂とは?
そんな深い所も考えさせられた作品でした。
是非。