月世の姫は記憶とともに、愛の夢に眠らせて

 『月』をテーマにした作品。同性愛というツイスト設定も流れるような展開と、淀みや澱も少ないクリアな文体に心地よく読めるのが印象的です。
 この小説の優れている点は、タイトル文の意味を捉えながら物語の本質に辿り着けるだけでなく、それらを取り巻くテーマとしての『月』の精神世界とが、見事に融合している展開に尽きると思います。
 性別を超えた純粋な愛と、肉体以上に繋がった精神の行方。
 短い永遠を思わせる心魂の在り方と、対比されるコズミックで美しい月描写。
 これらで結ばれるラストに、どこか幻想的で夢見心地のような思いが高鳴り、またその先を求めたくなる欲求がゆらりと騒ぎます。
 そのゆらめきの中で、改めて気付かされました。
 時を超えても、性を超えても、愛の本質は変わらないということを。

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