劣等感、自己嫌悪、思春期の重い苦しみ。夢かうつつか、祖父から言付けられた不思議な箱が中身をあらわにするとき、それらが一気に咲き誇る。この黄金の花の画、必見です!
夢かうつつか、その境目の無いリアルな夢に紡がれた一つの箱。そこから幻視のようにその中身が優しく開かれます。夏の風景が未来へと手招きするように、張られた糸が身を貫くほどに走り抜ける鮮やかな回収劇。そして美しい風景描写と弾かれたように突き動かす衝動感とが行く末の彼方を照らし、導かれるストーリーに心が安らぎを覚えます。 ありありと浮かぶ情景の数々と移りゆく繊細な心の機微とを感じてください。ふとした風景に心の風が優しく流れていく美しい物語です。
心がささくれ立っていた頃に、亡くなったおじいちゃんから「箱」を貰います。その箱の中身は、主人公の「ささくれ」など吹き飛ばしてしまうほどの物でした。彼は、それまで「つまらない」「好きじゃない」と捻くれてみていたものを、それを通して見ることで、これ以上なく素晴らしく見え、心を強く揺さぶられるのです。祖父の言葉を胸に、彼が進んだ道は……。情景描写が素晴らしく、その景色の中に自分も立っているようにリアルな風景が思い浮かびます。不思議で面白い作品でした。
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