人の心はガラス細工のように脆く壊れやすい。本作ではその認識を拡張した失恋の『リハビリ』という実に絶妙なキーワードが登場します。まさに言い得て妙。途中で気になるお相手が見つかったらお互いに束縛しないでフェードアウトする、なんとも自由度の高い荒治療としてのキーワードなのだろう。
そんなふたりの傷のなめ合いはお互いの心を、あたかも熱せられたガラスがこぽりと溶けあうように形を変え、かけがえのない甘美たる心地として染み渡るのがとても印象的です。
訪れる名残惜しい別れも、桜の舞い散る春の言葉で結びながら、後腐れのない爽やかなラストを迎えます。読後感として時の経過が美しく流れるライトな恋愛小説です。