あたしなりの罪の意識を、桜の季節に眠らせて

 事なきを得る幸運にどこまで縋り、頼ろうか。車なしでは生活できない田舎に祖父母と三人暮らしであろうか、結婚の意思もなく今年も巣立たないあたしがいる。わだかまる後ろめたさに罪悪感を紛らわすためか、はたまた罪の滅ぼしか。贖罪という名のあたしなりの言い訳をもって春を迎える物語。
 上手いと思ったのが、家族の免許返納について。脳裏に燻り続ける描写が時間の切迫を与えるだけでなく、人生の感傷に浸る感覚も相まって、じわりと胸中を締め付けるように問いかけてくる。そんな心情に寄り添う桜の慰み、縋る思いに共感を覚える。
 感情や思考が、身体的な状態が、無常観によって駆り立てられるよう。抜け出し難い現実に抱く罪悪感として描かれた春。いとわしいと思える事案が招く先送りの思考が、事なかれの幸運に映える良作。