モノクロ・ディストピア

主人公・綾香のアカウントがある日突然乗っ取られ、『クラスの女王』こと城崎から合成ポルノのいじめと冤罪の被害に遭ってしまう衝撃的な展開。

取り巻きの生徒は誰も助けてはくれない。

羞恥……悲嘆……憤怒……

教室内に広がる息苦しいディストピアが全面的に展開され、陰惨なシーンが強烈に脳裏に焼き付くことでしょう。

しかし、救いの手を差し伸べるユートピアは存在しました。
彼女を匿い助けた神木先輩。彼らは隠れた部室で自らの創作活動をAIに頼らず自身の手で成し遂げようとしていたのです。

生成AIに頼る手早な感情と欲望。
かたや人の手が施す丹精を込める理性と情熱。

この対比が筆舌に尽くし難い妙味…続きを読む

創作に携わる全ての人に手に取ってほしい作品。人間による創造とは何か？クリエイトという観点から見た時にＡＩは対峙する存在なのか？

この作品を通して、きっと多くのことを考えさせられ、それが、また貴方/貴女の次の創造につながること間違いなしです。

一粒で二度美味しい作品とはこういうかとか！？

短編＋舞台が学校ということで、ディストピアの世界がコンパクトにまとまっていました。展開もスピード感があり読みやすかったです。

ラストの余韻から、この物語の世界だけでなく、私たちが生きている世界の未来についても思案してしまいます。

近未来、やってくるかもしれない未来の
ありえるかもしれないおはなしです。
主人公といじめっ子のやりとりにヒリヒリしました。
旧美術室、こんな場所がひとつあればいいなと思いました。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（92文字）

まず発想が素晴らしい。タイムリーな現在の世の中の状況を組み込みつつ、予想しなかった方向へと物語が進んでいく。

ぜひ読んでもらいたい作品の一つ。

　ディストピア。社会が歪んだ価値観に支配され、人間が人間らしく生きられず、鬱屈とした状態を享受せねばならない社会。

　この作品で描かれるのは、生成ＡＩによってもたらされる息苦しさです。
　創作活動は全てがＡＩに持って行かれ、小説などを書いている人間は気持ち悪いと揶揄されるまでになっている。

　主人公の綾香はしょっちゅう電子機器を壊してしまう体質の持ち主で、そうしたものからは自然と距離を置くような状態になっています。その上でこっそりと小説をノートに書きしたためる生活を送っていた。
　しかし、そんな彼女の身にある日事件が起こり……

　ディストピア作品というと、基本的に社会全体を描くようなも…続きを読む

――美しくも切ない世界観が好きな貴方へ。


皆様、グリザイユ画法をご存知ですか？
絵を描く際、最初に白黒で陰影をつけてから、色をつけてゆく手法です。

この物語はグリザイユ画法で描かれる世界に近いと、私は感じました。

初め灰色の世界しか存在しなかった主人公の世界に、色が一つ一つ落ちて彩られていきます。

AIに創作活動を奪われた世界で生きる主人公。それでもなお創作活動を続ける彼女には居場所がありませんでした。
しかし、ひょんな出来事から、彼女は創作活動が自由にできる理想郷を手にします。


さて、物語の最後にはら彩られた世界に真っ黒なインクが落とされてしまいます。

それはなにか？

読…続きを読む

斬新な発想の作品ですが、読みやすく世界観に入りやすかったです。
タイムリーで色々と面白い作品だと思いました。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（188文字）