ポストアポカリプスをベースに巨大ヒーローとクトゥルフ要素をトッピングしたハードSF小説。跋扈する金属生物「械獣」、彼らから地球を奪還すべく降り立った人類、そして正体不明の巨神ラーディオスによる戦いが描かれます。
特筆すべきは終末モノとしての人間描写。
デバイスに意識を転送されながらも人間らしさを失わない男、人間爆弾として特攻を義務づけられた姉妹、極限環境と化した地球で戦いに明け暮れるしかない軍人たち。
それぞれの立場や抱えた事情が絡み合い、どんなに泥に塗れても必死に生き延びようとする人間の姿が浮き彫りになる。醜さの中から逆説的に見出される尊さが、重厚な物語を支えています。
物語が進むにつれて謎が明かされては新たな謎が立ち塞がり、どんどん面白さが加速していく本作。読み応えのある作品をお求めの方におすすめです。
※このレビューは「小説家になろう」様にも掲載されています。
※以下、若干ネタバレを含みます。
械獣や巨神というキーワードに目を引かれますが、本作で注目すべきは『人間』の描写やあり方であると思います。
械獣という脅威に対して、特攻の道具として使い捨てるのを厭わない者たち。
特攻の道具、ヒューマンクラッカーにされた事に苦しみ絶望する子供達。
そんな子供に対して力になろうとする大人。
特に苦しみのあまり多重人格になった少女と巨神に変身するベルトに改造されながらも少女に力になろうとする辺村の姿とやりとりに心打たれます
そして敵である械獣の中身はかつて人間の都合のいい道具だった人造人間であるという事実。
人間の悪い部分も良い部分も描写される本作はそれだけに深みや厚みのある面白さがあります、ぜひ御一読ください。