共感が強い。
そして、その思いを散る桜に重ね、切ない思いがどこか儚い美しさにもなっています。
Web小説サイトを読んでいると、よくあること、ということかもしません。
私自身、ずっと読み進んでいた小説がエタってしまったりすると、似た感情を抱くことがあります。
確かに「転生」があるのですが、その中の人の作品とはまた会えるかもしれません。
だけど、その名前だからこそ描けた作品もある訳で、そういった作品や中途の作品はもう目にすることは出来ません。
すこし古い、微妙なたとえかもれませんが、999というアニメの最後のシーン、仮の体で旅していた主人公の憧れの女性が、本当の体を取り戻しに去る。
その体で出会っても、主人公は気付けない。
そんなシーンを連想してしまいました。
心に残る小物語でした。
推しのweb作家さんの作品すべてが突如消えてしまう、その喪失感に苛まれても希望を見出す物語。
webでは跡形も残らない、その残酷さがまざまざと伝わってきます。作品たちは消えてなくなっても作家本人はきっとどこかで生きている、そう願いたくなるお話でもあります。
特筆したいのは、この物語で語られるあるひとつの喪失が、カクヨム含め、全てのweb作家さんとその活動を支持するファンとの間において、誰にでも起こり得る非常にリアリティに富んでいることです。推しの作家さんがwebという大海から姿を消すことは、その人の存在自体がこの世から消えてしまったという居た堪れない思いで胸が締め付けられることでしょう。その一端をこの小説で私たちの心の追体験として得られる価値ある物語だと思います。